3月 04

おみおくりの作法

「おみおくりの作法」を観ました。

評価:★★★★

名作と呼ばれる映画には、名シーンとなる場面がかならずあります。今年の米アカデミー賞で記念公演された映画「サウンド・オブ・ミュージック」なら、冒頭の修道女マリアが緑いっぱいの高原で名曲”サウンド・オブ・ミュージック”を歌うシーンでしょうし、スピルバーグ監督の「シンドラーのリスト」では白黒映像の中にポツンと赤い靴で表現されるユダヤ少女の行方だったり、日本映画でも黒澤明の「天国と地獄」や「椿三十郎」で一瞬使われるカラー映像がショッキングに映ったりしました。こうした名シーンに加わりそうなのが、本作「おみおくりの作法」のラストシーンでしょう。本作の詳しい製作過程は分かりませんが、本作はこのラストシーンがありきで作られたような気がします。そのシーンで流れる音楽も絶品。私も思わず、サウンドトラックをチェックしたくらいです。このシーンは2015年を代表するワンショットになったと思います。

というわけで話を戻して、本作「おみおくりの作法」は題名通り、様々な場所で孤独に死んだ人たちを弔うある一人の公務員を描いたドラマ。どの社会でも、家族を持ち、いろいろな人に見守られながら幸せに生き、死んでいく人がいる一方、様々な理由で孤独に生き、そして死に、その死からしばらく経ってから発見されるような人たちもいる。死に関わる映画といえば、先日「悼む人」という作品のレビューも書きましたが、あちらは一種のボランティア的な形で、勝手に悼んでいるのに対し、本作は公務員として、そうした孤独に死んだ人たちを仕事として弔っている主人公を描いている。しかし、この主人公ジョンはその与えられた自分の仕事を至極真っ当に、誠実に行う。家族や親戚、知人はいないかとほうぼう探し回ったり、自分一人で弔う場合も、遺品から故人をしのぶスピーチを書き起こし、司祭や牧師にちゃんと読み上げてもらう。出棺や納骨まで各種手続きは万全。ここまで完璧にこなすものだから、誠実な仕事内容に対し、弔いの処理はなかなか進まないので、リストラの憂き目に合ってしまう。そこでジョンは最後の仕事に、今まで以上の力を注ごうとするのだ。

”作法”という邦題がついているように、ジョンの誠実な仕事っぷりは(仕事の内容がよく分からなくても)見ていてもすごく気持ちいい。孤独死という悲しい最期を迎えて人も、ジョンに”おみおくり”してもらったら、幸せに成仏できそうに思います。普段仕事をしていく中でも、一種完璧な型を持っている人というのにたまに出会いますが、その人の仕事っぷりは観察していても面白いのと、この映画の面白さは同義なように思います。誠実に仕事をするあまり、自分自身の幸せを省みなかったジョンが最後の仕事に、これまで以上の全精力を注ぎこむ。よく誠実な仕事の成果は、ちゃんと自分に返ってくるといいますが、それがあの印象的なラストシーンに素直に表現されていると思います。死をテーマに扱う映画というのはすごく重たい感じもするし、進んで観に行く感じがしないかもしれないですが、「おくりびと」などの映画にも通じるところもあり、これらの映画を楽しむ土壌が日本にもあると思うので、是非観てほしいなと思います。

次回レビュー予定は、「振り子」です。

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