3月 12

振り子

「振り子」を観ました。

評価:★★

シンプル・イズ・ベストではないが、世の中には、余分なものはくっついていないシンプルなものが良いと評価されるものがあります。この映画「振り子」も、そんなシンプルな作品。ある夫婦が結ばれ、様々な困難を乗り越えながら、最後に小さな奇跡を起こす物語。正直、予告編を見た印象以上のことは(ラストシーンは少々工夫があるけど)起きません。悪く言えば、単純で面白みはないかもしれないけど、僕は逆に余分な要素がないので、純粋に物語に感動したいのであれば、これくらいのボリューム感で十分ではないかとも思えてきます。

この映画の主演は、中村獅童(青年期は石田卓也ですが)。この人が本作みたいな夫婦愛のような作品に出ているのを見るのは、大ヒットしたラブロメ「いま、会いに行きます」(2004年公開)以来です。印象的にはアクションや任侠などの役どころが多いイメージですが、ドラマの中でも、図体が結構大きなキャラクターの内面を繊細に描くには長けている人かなと思います。妻役となる小西真奈美との相性もよく、粗野な夫に、何があっても笑顔で連れ添う夫婦像にはしっくりきています。大介の育て親役の武田鉄也も好演。この人の前作は「くじけないで」での情けない息子役もハマっていましたが、人柄というか、イメージなのか、口うるさい中でも温かみを見せるキャラクター像を巧みに演じれる人だと思います。クセは強いですが、もっとスクリーンにも登場してもらいたいなと思います。

原作は、お笑い芸人でパラパラ漫画家として知られる鉄拳の2012年発表の同名作品。近年では別の作品が単行本化され、人気ですが、この映画の原作も強い印象(エンドクレジットで再現)を残します。ただ、パラパラ漫画は分量の割に、ストーリーとしての量がどうしても少ないので、こうしたシンプルな形の作品にしかならなかったのかなと思います。だったら、パラパラ漫画自体とくっつけてしまうとか、奇抜な演出法を見せてもいいと思いますが、映画本編はあくまでストーリーラインをそのまま映像化する以上の工夫はない感じ。あえて映画で観る必要もないかなとも思えますが、美しい物語を純なキャスト陣が好演しているのを楽しむのが正解な鑑賞法だと思います。

次回レビュー予定は、「くちびるに歌を」です。

ちなみに原作は↓↓

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