3月 31

イントゥ・ザ・ウッズ

「イントゥ・ザ・ウッズ」を観ました。

評価:★☆

いろいろなおとぎ話の主人公たちが、同じ森に集うことで起きる悲喜こもごもの物語をミュージカルとして描いた作品。全て歌というわけではないものの、「レ・ミゼラブル」くらいのほぼ歌で作られている作品なので、ミュージカルが苦手な方はご注意を(笑)。原作は、トニー賞も受賞した同名作品。監督はミュージカル畑出身の「シカゴ」のロブ・マーシャルが手掛けています。

タイトルに”森”という言葉が出てくるように、お話としては”森”が登場する複数のお話が交錯する形で描かれます。「シンデレラ」、「赤ずきんちゃん」、「ジャックと豆の木」、「塔の上のラプンツェル」という大きな4つのお話に、プラスして物語のベースを動かすパン屋の夫婦と魔法使いの老女のエピソードが加わってきます。登場する全てのお話にある共通要素である、”森”という舞台にそれぞれのお話の主人公たちが五月雨式に交錯していく様は、観ていて単純に面白い。おとぎ話というのは小さい頃にいろんなところで話を聞いたり、読んだりしているけど、(絵本で挿絵は挟まれているものの)結局は頭の中でどういう物語なのかを想像していかないといけない。小さい頃にそうしていろいろ想像したことが、目の前のスクリーンで実際に形となって表現され、しかも楽しい歌や音楽とともに流れていく様は如何にもディズニー作品らしい夢の情景になっていると思います。

しかし、この映画は単純にメデタシメデタシで終わらないところがミソであり、最大のネックでもあるのです。そう、おとぎ話の終わりはいつもメデタシメデタシ。ところが映画では後半、いろんなおとぎ話の主人公たちがかける願いというのが、それぞれに暴走し始めて悲劇的なことが次々に起こっていく。最大の要因は、物語のベースにあったパン屋夫婦、そして魔法使いが願ったことに起因してくる。欲望には際限がないとよくいいますが、願いは行き過ぎると欲望になり、そして渇望へと変化していく。そうした肥大化した願いというのは、他の人の欲望をも巻き込んで、究極的な自分勝手として世界に被害をもたらす、、、といえば、すごく教訓深い物語の終わり方になっています。

でも、僕は映画作品として、序盤の楽しい楽しい夢溢れる感じが、ラストは凄くほろ苦い現実的な味わいになってしまうのが、どうも作品としてイマイチなように感じました。おとぎ話はおとぎ話として終えるべきだった。おとぎ話でも、願いは全てかなうわけではなく、何かを失いながらも強く明日を生きていくという形になって終わるものがたくさんあります。本作は、そうしたおとぎ話のフレームから外れ、現実的な落としどころに据えてしてまっているので、夢も希望もないような味わいしか残らないのです。教訓めいた形にするのは構わないですが、せめて映画を観ている間は夢を見させて欲しいものです。

次回レビュー予定は、「風に立つライオン」です。

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