4月 16

パリよ、永遠に

「パリよ、永遠に」を観ました。

評価:★★★☆

エッフェル塔や凱旋門など、古き良き歴史を今に伝える文化都市・パリ。そのパリの美しい風景は第二次世界大戦終戦間近、一人の男の決断によって守られたというお話。ヨーロッパ各都市は2度の世界大戦の舞台になっていることもあり、多くの文化的遺産が戦争によって破壊された。フランスも第二次世界大戦時はナチス・ドイツの侵攻により、占領統治下に入るわけだけど、映画「シャトーブリアンからの手紙」にも描かれていたように、ドイツ側の立場にたつと、当初は併合という色を強くし、フランス国民との平和的な融和を目指していたところもある。でも、実際は戦況が悪化し、戦争末期にはレジスタンスたちの激しい攻撃にさらされていた。そして連合国の進撃により、パリが陥落しそうになったとき、撤退をするならば歴史的文化財の破壊もやむなしという命令が、ベルリンからパリに飛ぶことになるのです。

歴史、特に近代の戦時下の情況は、歴史的な資料も機密扱いで破棄されることが多いので、本作で描かれるようなドイツ側のパリ司令官コルティッツ将軍とスウェーデン総領事ノルドリンクとの駆け引きがあったのかどうかは定かではないのでしょう。史実は映画の通り、パリの街はコルティッツの命令により、大規模な破壊工作されることなく、歴史的な街並みは現代にも残ることができたわけですが、その裏側にも本作で描かれる以上のドラマがあったように思います。映画では、それをコルティッツとノルドリングの息詰まるような掛け合いということに限定しています。それが歴史的に正しい・正しくないは別にして、2人の男が戦時下のパリ、そして未来のパリをどのように残していくかを強く考えていたというところに注力した熱いドラマに仕上がっているのです。

物語としては二人の掛け合いが主軸になっていますが、お話としては映像で描かれないところの伏線もいろいろ巡らせています(最後の最後で、ノルドリングの台詞にドキッとさせられたりもあるし)。もとがフランスで大ヒットした舞台劇(ちなみに、映画の主演二人も舞台劇出演俳優)だそうですが、映画は主な舞台となるナチスのパリ司令部だけではなく、いろんなパリ各所で起こる出来事をミニショットで描いていくことに映像作品としての映画本作の醍醐味があるといえます。僕はラストのエンドクレジットがいいなーと思いました。美しいパリの今の景色の中に、本作のような歴史が秘められていると思うと、パリを観る目も変わってくるように思います。

次回レビュー予定は、「繕い裁つ人」です。

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