5月 20

インヒアレント・ヴァイス

「インヒアレント・ヴァイス」を観ました。

評価:★

「マグノリア」のポール・トーマス・アンダーソン監督が、トマス・ピンチョンの原作小説「LAヴァイス」を映画化した作品。僕の中で、アンダーソン監督はよく映画を観るようになったときに、「マグノリア」で衝撃(というか笑撃)を受けた監督で、前後の「ハードエイト」や「ブギー・ナイツ」も見事な作品でした。ただ、「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」以降の近作はどうも狂気に走った人を描くようになり、どうもピントがずれているというか、狙いどころを外しているように思えてなりません。ひょっとしたら、これらの作品のほうが彼の持ち味だと言われたら何もいえませんが、狂気に走るとはいいながら、例えば、デヴィッド・リンチのような美しさもないし、イニャリトゥのようなスピード感というかキレもない。どっちかというと、ノンビリとしたテンポで物語を進めるので、ピントが徐々にずれてくるように思うのです。

本作の主人公はおちぶれた探偵のドッグ。彼の前に突然現れたのは、忘れられない元恋人のシャスタ。シャスタは愛人の妻と、その恋人が大富豪を相手にした誘拐事件を企んでいると打ち明け、その真相を暴いてほしいとドッグに依頼する。元恋人の幻影を追いながら、依頼を受け入れたドッグは彼自身もきな臭い陰謀に巻き込まれていくのだった。。。

と書きましたが、序盤と終盤以外は終始ウトウトとしてしまったので、物語どういうよりはドラマの断片的な印象しか残っていません。映画の鑑賞中に眠たくなるのは(個人的な身体の疲れは別にして)、あまりに心地よい映像と音楽ばかりで眠たくなるか、単純に映画がつまらないかのどちらかですが、本作に限っては後者のほうが大きかったかなと思います。予告編で垣間見える、どこかコミカルで狂気をはらんだ世界で物語は進行していくのですが、映画のテンポが淡々としすぎていて起伏に乏しいのです。場面場面では可笑しいとこもあるのですが、それが映画全編の味になっていないように感じるのです。お話のどうこうは寝てしまっていたので評価はできませんが、作品としてはもう少しアプローチを考えたほうがいいと思ってしまいました。

次回レビュー予定は、「グッド・ライ ~いちばん優しい嘘~」です。

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