6月 02

トレヴィの泉で二度目の恋を

「トレヴィの泉で二度目の恋を」を観ました。

評価:★★★☆

人生の晩年期を迎えた二人の老人が落ちる恋物語。主演は「愛と追憶の日々」のシャーリー・マクレーンと、「人生はビギナーズ」のクリストファー・プラマー。この両俳優は、もう大ベテランだけど、今ではいろいろな作品での名脇役をかってでているので、(いい意味で)大御所という雰囲気はない感が、この作品をとても軽妙な味わいなものに仕上げていると思います。特に、シャーリー・マクレーンはカーティス・ハンソン監督の「イン・ハー・シューズ」での名おばあちゃんぶりが僕の中では印象が強くて、本作でも、どことなく憎めなく、キュートなおばあちゃん役を好演していると思います。お互い老化と病に脅かされながらも、明るく前を向いていく二人の姿に胸がキュンとなってくるのです。

この映画の1つのキーになっているのが、題名通りの”トレヴィの泉”のシーン。これはフェリーニの名作「甘い生活」(1960年)の、有名なトレヴィの泉でアニタ・エクバーグとマストロヤンニが戯れるシーンに、シャーリー・マクレーンが演じる老婆が憧れをずっと抱いているところからきているんですが、ラストでの、この再現シーンが秀逸にできていると思います。マクレーンとプラマーがそれを再現するといっても、年老いた老人カップルが噴水で戯れるなんて、見た目は、頭がおかしい危ないカップルにしか見えない。それを「甘い生活」の名シーンをうまく使うことで、マクレーン演じるエリサが夢見ていたことと、プラマー演じるフレッドが、その気持ちに応えるという気持ちの部分が、うまく映像に昇華されているのです。目の前の出来事なんて、所詮物語を語るうえでの事実という側面に過ぎない。大事なのは、その事実というのが、各キャラクターの中でどう捉え、気持ちとして感じたかなのだと思うのです。一見すると、フラッシュオーバーしただけの単純な手法ではありますが、これがなかなかと含蓄深い味わいになっていると思います。

本作の監督は「イルポスティーノ」のマイケル・ラドフォード。経歴を見ると、イギリス人監督なのですが、「ヴェニスの商人」や「イルポスティーノ」などイタリアが舞台の作品も手がけるなど、イタリア色を若干感じる(本作も含め)監督さんなのかなと思います。ゆったりとした時の流れの中で、如何に煌びやかに自分の人生を彩るか、、、これはいくつになっても、永遠のテーマのように感じます。

次回レビュー予定は、「THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦」です。

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