7月 16

ゼロの未来

「ゼロの未来」を観ました。

評価:★

「12モンキーズ」のテリー・ギリアム監督が手がける近未来を描いた作品。孤独に生きるコンピュータ技師のもとに、ある日不思議な雰囲気を持つ女性が現れたときから人生が変わり始めるという筋のお話。孤独な技士を演じるのは、「イングロリアル・バスターズ」のクリストフ・ヴァルツ、不思議な女性を「海の上のピアニスト」のメラニー・ティエリーが演じています。

うーん、どうなんでしょう。あまり書くことがないというか、印象に残らない作品です。ギリアム監督というと、ギレルモ・デル・トロ監督とかと同じく独特の映像美があるのですが、その美しさ云々というか、本作ではあまりにその造形に意識を取られすぎていて、お話がすごくおざなりになっているように感じてなります。映画のタイトルでもある、”ゼロの理論”という物理の統一理論のような究極理論を解明することに使命を感じている主人公が、そのことと自らの仕事がどういう風に関係しているのかも分からないし、そもそも”ゼロの理論”は世界にどういう影響を及ぼすかも理解不能。仕事に使命感を持つ人が、自分のことを大切にしてくれる人の存在によって、仕事以外に目を向けていくことはお話上よくあるものの、この映画の二人の話の方向はすんなりといくようには演出されておらず、ただただ狭い空間で語り合うシークエンスだけで物語を進めていこうという形がどう見ても浅はかとしか思えません。

そういうお話上というか、演出上の問題はさておき、ギリアムならではの映像イマジネーションは本作でも爆発しています。しかし、それはちゃんとしたお話の筋書きがあってこそ。ただ、こういうモノをつくってみたけど凄いだろうとか、お話にこんなガジェッド(小物)を作ってみたから凄いだろうでは、観客を映画の最後に引っ張っていく力量には欠けると言わざるを得ません。デル・トロが「パシフィック・リム」で大衆劇でありながら、自分の才能・センスをその中で如何なく発揮していたのとは対称的な、残念な作品になっていると思います。

次回レビュー予定は、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」です。

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