8月 06

サンドラの週末

「サンドラの週末」を観ました。

評価:★★★★

「ロゼッタ」、「ある子供」などの作品で知られるダルデンヌ兄弟監督作品。ダルデンヌ兄弟監督作というのは、フィクションではあるものの、虚栄の内容というよりは、よりリアルな現実の中で起こる様々な事柄を描いていくというイメージが強いです。本作でも、人員整理のため解雇という危機に陥った一人の女性の行動と、彼女や周りの人々の変化を克明にカメラに収めていく作品となっています。主演は、本作でアカデミー賞主演女優賞ノミネートになり、「エディット・ピアフ」で受賞もしているマリオン・コティアールが務めています。

この映画、まず何といっても空気感がすごくいいんです。話の内容はすごく辛辣な物語ですけど、「サンドラの週末」という邦題もピッタリなくらいに、けだるい週末の空気感をカメラ越しに感じることができるのです。近所で行われているサッカーの少年たちの声、カフェに集う人々、車に差し込む長い日差し、サンドラが横になるベット周りの空気に至るまで、土曜や日曜のどこか間延びした日常というのを痛いくらいに感じる。内容以前に、ここにまず注目して欲しいなと思います(笑)。物語のほうは、そんな週末感が漂う日常の中、同じ週末でも、解雇の瀬戸際に追い込まれているサンドラの終末感がひしひしと伝わってきます。体調を崩し、長く休職していたサンドラが、復職しようと思ったら会社に席はなかった。職員へのボーナス支給のため、解雇やむなしの状態に追い込まれていたが、経営者を説得し、何とか従業員の自主投票で彼女の解雇の可否が決まることになる。サンドラが復職した場合、各従業員へ支払われる予定だったボーナスはなしになるという前提がある自主投票。サンドラは成長期にある子どもやマイホームのために、何とか解雇回避の票集めに奔走していくのだが。。

空気感とは別に、こうした状況でサンドラが奔走しないといけない現実は結構厳しい。従業員も、目の前のボーナスを取るのか、それとも彼女を守るほうをとるのか、、究極の二者択一を迫られるわけだけど、こういうときこそ、各個の人間性というのがストレートに出て、観ていて面白かったです。当然、鼻からサンドラを拒絶する人もいれば、彼女の人柄に向き合って真剣に考える人もいる。人それぞれと言ってしまえばそれまでですが、他人が困っている状況のときに、如何に自分自身の頭で考え、そして行動を起こしていけるかが、その人自身の分岐点なんだなーと思います。映画は結論として、1つの答えは出ますが、最初は絶望が先に立ち、乗り気でなかったサンドラ自身も、この週末の奔走によって、周りの人物たちと同じように大きく成長したのかなと思います。静かに淡々と進む作品ですが、じっくり味わえる秀作だと思います。

次回レビュー予定は、「ミニオンズ」です。

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