8月 14

日本のいちばん長い日

「日本のいちばん長い日」を観ました。

評価:★★☆

戦後、昭和史を多く手がける半藤一利の同名原作を元にし、「駆込み女と駆出し男」の原田眞人監督が映画化を手がけた作品。原作自体は1965年に執筆されており、1967年には岡本喜八監督の手によって映画化もされていますが、戦後70年という節目の今年に再映画化されることになりました。1945年8月15日の終戦という日に向けて、多くの人たちが悲惨な戦争を終わらせるべく紛争していく話を描いていきます。

物語の主軸になるのは、学校の歴史教科書にもあまり書かれていない、終戦直前の8月14日〜15日にかけて皇居を中心に起こった若手青年将校たちによるクーデター(いわゆる宮城事件)が中心になります。昭和初期に起こった五・一五事件や、二・二六事件と違い、同じ青年将校たちの暴発ながらも、文民暗殺というところにまで広がらず、軍の中で押さえこんでしまったため、それこそ大きな事件として今まで取り上げられることも少なかったのかなと思います。映画を見ていると、今までの戦争映画と違って、職業軍人として生きてきた若者たちの終戦が決まった後のやるせない焦燥感、手足をほとんどもぎ取られ、政府の中でも立場が小さくなっていた海軍、多くの兵士たちを抱えながら、最後まで徹底抗戦を訴える陸軍と、同じ軍隊でも立場が違うとこうも違うかという一面を感じることができます。

ただ、本作は原田監督の持ち味がよくない一面として出てしまっているかなーという印象。1つ1つのシークエンスをとてつもなく短く区切って、その短いシークエンスを幾重にも重ねてバームクーヘンのような味わいを見せるのが原田監督の特徴。それがドキュメンタリータッチで、いくつもの男たちが同じ方向に動いていくドラマ「突入せよ!あさま山荘事件」や、限定された家族の中の物語「わが母の記」では上手く働いていましたが、本作ではあまりに多くの人たちが登場し、登場している各人の背景も考え方も行動もまちまちなので、終戦を切り取った日のお話としてはこういう形もありかと思いますが、1つの大きなうねりの物語としては中途半端な印象を拭えなかったかと思います。

あと、阿南大臣や畑中少佐など軍人側の動きはよく分かるのですが、天皇や鈴木貫太郎などの文民側の動きがうまく捉えられていないのも、同じ終戦を描く物語としてはイマイチかと思います。

次回レビュー予定は、「チャッピー」です。

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