10月 26

海賊じいちゃんの贈り物

「海賊じいちゃんの贈りもの」を観ました。

評価:★★★☆

子どもの頃、大人の世界は理路整然としたものだと思っていたのが、自分がいざ大人になった(もしくは大人にさしかかろうとする)ときに、大人のほうが幼稚で下世話だと思ってしまうことがたまにあります。僕が今でも覚えているのは、ちょうど思春期頃に親戚の法事か何かで一同集まったときに、あの人とあの人はこういうことでいがみあって口を利かないとかという、親戚間のパワーバランスを知ったとき。いがみ合っている原因も、例えば遺産がどうのこうのというお話ではなく、過去のつまらない事件が引き金だったりしたりします。本作「海賊じいちゃんの贈りもの」も、そうしたつまらない大人世界のいざこざに、子どもたちが独自に魅せる奇跡のような話になっているのです。

マクランド家は父親のダグ、母親のアビーを含め、全員で5人家族。どこにでもある普通で、ちょっとおかしな家庭だが、ダグとアビーは離婚問題を抱え、いつも家庭内はギスギスしていた。そんな折、一家はダグの父コーディの75歳の誕生日を祝うため、ロンドンから故郷スコットランドへ向かう。しかし、そこで待っていたのは盛大に計画されている誕生日とは裏腹に、それぞれの抱える問題を表面上は何事もなく、外見だけをとにかく見繕う大人たちの見栄。ギスギスしたやり取りに、次第に大きな口論になっていく大人たちをしり目に、肝心のコーディは孫たちを連れ、静かな浜辺にドライブへとやってくる。落ち着いた想い出づくりのはずが、コーディの身に思わぬ悲劇が待ち受けるのだった、、、

予告編でもあるのでネタバレにはならないと思いますが、コーディの突然死により、取り残される孫(ダグの娘、息子たち)の対応というのが物語の大きなキーポイントになります。ギスギスした大人たちに任せると、弔われるはずのコーディが浮かばれない。誕生日パーティでさえ、主役不在で勝手に進めてしまう大人たちだから、、、という結論に達した孫たちは、自分たちで祖父コーディを弔うことを決意するのです。物語的には祖父の死という重たいテーマが提示されるのですが、終始暗くならないのは、コーディの望んでいたであろう事柄を、子どもたちが素直に実現してしまうところ。コーディの重たい遺骸を運んだり、手作りのイカダを短時間で作り上げてしまうところなどは、少し非現実的な描写ではありますが、逆にそれがおとぎ話風になり、バイキング伝説のモチーフとうまくオーバーラップしてくるのです。この演出はちょっとお洒落で、素敵だなと思ったりします。

よく子どもは大人以上に繊細で、行動的とはいいますが、こうした子どもたちの起こすマジックを寓話風にし、それを大人たちのギスギスした人間劇(現実)へとうまくフィードバックを図っています。映画の中盤でフワッとした物語が、終盤でストンと収まりよくなっているのは、お話の緻密な設計があったからこそと思います。

次回レビュー予定は、「海街diary」です。

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