10月 27

海街diary

「海街diary」を観ました。

評価:★★☆

2013年に日本マンガ大賞に輝いた吉田秋生の同名コミックを、「誰も知らない」、「そして、父になる」などの作品で世界に名を馳せる是枝裕和監督が映画化した作品。ちょうど、この原作コミックがマンガ大賞受賞時に、マイブームがマンガだったこともあって、原作コミックも読んでいたんですが、すごくいい作品(原作は、、)でどういう風に映画になるんだろうと思って期待していた作品でもあります。キーポイントとなる主演3姉妹を演じるのが、しっかり者の長女・幸を綾瀬はるか、自由奔放な次女・佳乃を長澤まさみ、心優しい三女・千佳を夏帆、母親違いで転がり込むことになる末妹・すずを広瀬すずが演じています。

原作ファンの僕がまず、いいなーと思ったのが、映像が紡ぎだす鎌倉の空気感でしょうか。これは映画ならではというところがあります。すずが住んでいた東北・山形の山並みもいいし、それと好対照になる海の鎌倉がまた映える。江ノ電を中心とし、山側の緑と、海側の青がこれもコントラストよく映る。桜、花火、蝉の声や波の満ち引きなどの音も含め、この何ともいえない透明度を感じる舞台背景が、映画作品としても映えたものにしていると感じました。是枝監督は過去作品でもそうですが、映像のトーンをすごく大事にしていて、前作「そして、父になる」でも、”わが子の取り違え”という重たいテーマを描くところはとことん暗く、そしてラストの分かりあいに向けて徐々にフィルタを淡く、穏やかにものにしていくのが、物語とすごくシンクロしてくる。本作はどちらかというと背景だけの印象ですが、原作ファンが期待する鎌倉の情景は適切に捉えられていたと思います。

ただ、残念なのは、三姉妹+すずという4人構成の姉妹、それぞれ各人のエピソードが独立しながら、多くの人たちを巻き込んでいく群像劇のような原作の構成ではなく、あくまで4姉妹がセットになって動くところに、本作の軸があるところでしょうか。無論、そんなたくさんの登場人物を登場させ、複数のエピソードを盛り込むことは映画の尺上できないということは分かっていても、それに挑戦しないと原作の味は出ないのも正直なところ。原作ファンにとっては好きなエピソードは複数あるのでしょうが、僕が好きなすずが所属するサッカークラブのエピソードが映画では盛り込まれなかった(出てくるのは、ボーイフレンド役として登場する風太のみで、イメージもだいぶ原作と違う、、)ところでしょう。一見平和そうに見えるのどかな生活の中で、突然それが断ち切られる病気、死、対象的に存在する生、愛(人への思いやり含む)、、単調に見える中でも、いろいろ生活を彩る軌跡を原作は描いているのに、映画のほうは映像も含め、あくまで表面上の美しさのみにこだわっているところが少々残念なところです。

無論、原作を知らない人にとっては、いい役者に、お話も一定のまとまりを感じる作品だとは思いますが。。。映画を気に入った人は、是非原作も読んでもらいたいです。

次回レビュー予定は、「ボクは坊さん」です。

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