11月 05

カプチーノはお熱いうちに

「カプチーノはお熱いうちに」を観ました。

評価:★★★★★

老舗パスタ屋の跡取り息子がゲイであることをカミングアウトしたことから起こる傑作ドタバタ人情劇「あしたのパスタはアルデンテ」のフェルザン・オズペテク監督が手がけた、ハートフルラブストーリー。「あしたのパスタ~」も単なるコメディの枠に収まらず、生きることの苦しみに悩むキャラクターを笑いの中にうまく投影していましたが、本作も単なるラブストーリーに終わっていないことが凄い。13年の時を挟んで、過去と現在をつなぐ愛の物語を美しくかつ粋に捉えている作品になっています。

南イタリア・レッチェのカフェ、タランチュラで働くエレナは、親友のシルヴィアとゲイのファビオとともに毎日を楽しく軽やかに生きていた。そんなときシルヴィアが彼氏として連れてきた粗暴なアントニオと出会う。最初は何をやるにもアントニオの行動が気に入らなく、真っ向から対立する二人だったが、自分の夢であるカフェ・オーナーの道が開けてくるとともに、人生も輝き始める。そんなエレナの真っ直ぐな行動に、アントニオは徐々に惹かれていくのだが、、

予告編を観ても分かるように、13年という時を経た物語となっていますが、13年間という経過を羅列して描くわけではなく、エレナとアントニオが出会った瞬間と、13年の時を経た後の二点(もちろん、その前後はありますが)をまたぐ形で物語が進行します。このときのまたぎ方がとにかくスマートで美しい。出会って、恋しているときはもちろん互いの外見や性格や趣味などで惹かれあう要素というのは決まってくると思いますが、長い年月を経た後というのは、そういう要素ではない別のつながりが生まれてくる。それが言葉でいえば愛というものなのでしょうが、この愛というのは言葉以上に形容しづらいものなのではないでしょうか。それは第三者には決して推し量ることができない。この推し量ることができない一組のカップル、そしてそれを取り巻く友人、家族の心のつながりを、この映画は十二分に堪能させてくれるのです。

僕が過去観たイタリア映画(といっても、近作だけなので、「ニュー・シネマ・パラダイス」とか、「ライフ・イズ・ビューティフル」とか、オズぺテク監督の「あしたのパスタはアルデンテ」とか)は、どれも登場してくる全てのキャラクターが愛くるしく、それぞれに愛おしい存在のものが多いように思います。恋の国でもありますが、それこそ人が人らしく愛しむという営みを、普段の生活の中でも大事にしているように思えてなりません。自らが夢に向かって人生を彩れば、その彩りに惹かれ、多くの人が集い、更に人生が美しいものになっていく。愛の賛歌を謳うイタリア映画の中に、また素敵な作品が一本加わりました。

次回レビュー予定は、「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」です。

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