11月 23

ミケランジェロ・プロジェクト

「ミケランジェロ・プロジェクト」を観ました。

評価:★★★☆

俳優としても第一線で活躍しているジョージ・クルーニーによる監督・脚本・主演作品。共演にクルーニーの相棒といってもいい、「ボーン・アイデンティティー」のマット・デイモンや、「エリザベス」のケイト・ブランシェット、「ゴースト・バスターズ」のビル・マーレーや、「オー!ブラザー」のジョン・グッドマンなどの盟友が参加している。作品公開も遅れに遅れた2014年だったが、日本での公開も諸事情で遅れ、2015年の秋にようやく劇場公開になっています。

作品の舞台になるのは、第二次世界大戦下のヨーロッパ。ヨーロッパで勢力を広げたナチス・ドイツは侵略した各地での美術品を剥奪していった。一方で、連合国軍はノルマンディーの上陸後、ドイツに対する反撃を開始すると同時に、奪われた美術品を奪還すべく、秘密裏に美術品奪還専用の特殊部隊”モニュメンツ・メン”を結成する。ロバート・M・エドゼル原作の実話に基づいたノンフィクションになっており、数々の装飾品も含め、映画としても見応えがある作品になっています。

僕が最初に本作を観て思ったのが、どこかスピルバーグの「プライベート・ライアン」(もしくは、テレビシリーズの「バンド・オブ・ブラザーズ」)に似ているなと思ったことです。この戦争で奪還するのはライアン二等兵という兵士ではなくて、ナチスに奪われた美術品ということになるのですが、激戦が行われる最前線ではなくとも、様々なところに危険が潜む混乱する戦地の中で、美術品を行方を情報収集し、ドイツ軍が敗走とともに美術品を破棄する前に、東から進出するソ連軍に略奪される前に、奪い返すという展開がスリリングでよいのです。惜しむらくは、若干お話のテンポが緩いのが難ですが、魅力的なキャラクターとともにお話が展開していく様は見ていて楽しいものでした。

作品中の台詞にも似たようなものがありますが、兵士の命をかけてまでも、美術品を奪い返す意義というのはどこにあるんでしょうかね。古代や中世に生み出された美しい美術品に対し、過去の戦争の歴史を見ても、それを破壊から守るために命をかけた人というのも数多くいるのは事実です。それでも私たちが美を愛でるのは、そこに刻まれた人としての叡智(純粋な人らしさ)を戦火から守りたいためだと思います。それは例え、何千年の時を経たものであろうと、十数年前に描かれたものであろうと変わらない。マット・デイモン演じるグレンジャーが、迫害されたユダヤ人から奪われた一枚の絵を、人がいなくなったゲットーに戻すシーンに象徴されるように、戦争が奪ってはいけないものというのはあるのだと思います。

次回レビュー予定は、「ボーイ・ソプラノ」です。

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