11月 25

エベレスト3D

「エベレスト3D」を観ました。

評価:★★★

IMAXの3D字幕版にて

1996年にヒマラヤ山脈の最高峰エベレストで実際に起こった実話を、迫力ある映像とともに描き出す作品。こうした山(登山)を舞台にした映画といえば、スタローンの「クリフハンガー」や、ちょうど学生時代に見た「バーティカル・リミット」などの作品が思い出されますが、これらの”山”映画は単純な山のスケール感を映し出す映画というよりは、山を舞台にしたアクションであったり、サスペンスであったりといった要素が物語の中心になっており、山のスケール感を楽しみたいのに物語の安っぽさに閉口することが多かった気がします。それこそ、ここ最近は3D技術が年々優れたものになってきており、山の迫力を3Dの迫力でこんどこそは堪能したいと思い、予告編の映像の面白さに惹かれて観に行った作品でした。

その意味では、予告編だけに惹かれたこともあって、単純にどういう物語かを知らずに見たので、いい意味でも悪い意味でも裏切られた作品でした(笑)。まず、悪い意味からで、、といくと、予告編の凄さに対し、思ったほどの迫力ある3Dの絵はなかったかなという印象。確かにクレパスの下から見上げ、細いハシゴだけで氷河地帯を抜けていく場面や、吹雪の中で身動きが取れなくなるところは大画面(IMAX)ならではの効果を堪能できるところはあったのですが、映像の迫力だけでいくと期待値の30%くらいの出来といったところ。せっかく題名に3Dと謳っているのですから、3Dの迫力を感じられるような場面をもう少し盛り込んで欲しかったところ。そうした映像の力点以上に、本作は物語の作りに力が入っており、そこが予想外のいい面として表れていたのです。

本作で描かれるのは、かつては冒険家などの一部の人たちだけに開かれてきたエベレストが、大金ではあるものの、きちんとお金を支払えば、一般人までも登頂可能になってきた商業登山の走りであった1996年に起こった出来事を描いています。知らない人は実際に作品を見てもらいたいので詳しくは書かないですが、近年では今までなら選ばれた小数の人々しか実現することができなかった世界を、商業として観光化していく流れというのは一般的になりつつあるのかな(例えば、宇宙とか、南極とか)と思います。しかし、そこは従来は冒険家しか足を踏み入れなかった場所。危険はすぐ傍で、隣り合わせにいるということを忘れてはならないことを本作は教えてくれるような気がします。

でも、難しいところですよね。例えば、宇宙に行きたいという夢を小さいころから持っていて、大金を貯めたはいいが、ロケットは航行途中で機体不良が分かったとき、宇宙まであと少しなのに、そこで引き返す勇気を持てるかどうか。本作では、そうしたギリギリの選択、生き残るための行動、生死を分ける様を切々と描く作品となっています。今までの登山映画のような大味感は抑え、しっかりした物語作りに徹しているところが好印象な作品です。

次回レビュー予定は、「ヴィンセントが教えてくれたこと」です。

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