11月 26

ヴィンセントが教えてくれたこと

「ヴィンセントが教えてくれたこと」を観ました。

評価:★★★★

アルコールとギャンブルに溺れるダメおやじ・ヴィンセントが、隣に引っ越してきた母子家庭で育つ少年オリバーとの出会いにより、ともに人間として成長していくというハートフル・ヒューマンドラマ。主演のヴィンセントを演じるのは、「ミケランジェロ・プロジェクト」のビル・マーレイ。あと、有名どころといえば、オリバーの母親を演じる「デンジャラス・バディ」のメリッサ・マッカーシーくらいのインディペンデント映画ではありますが、これが全米2500館に拡大公開されるように、なかなかセンスのあるドラマに仕上がっていると思います。

映画作品の中には、役者の持ち味と演じている役柄がピッタリとハマる作品というのがありますが、本作はまさにそれを絵に描いたような作品となっています。ビル・マーレーといえば、出世作となる「ゴースト・バスターズ」のピーター役のように飄々としたキャラクターを演じるイメージが強いのですが、「ロスト・イン・トランスレーション」や「グランド・ブタペスト・ホテル」のような脇をやらせても光る、独特の持ち味を持った俳優さんという感じがします。しかし、とかく彼のような個性が強い俳優は、往々にしてフィットする作品というのはなかなか巡り合わないことが多いのですが、本作のヴィンセント役なんかは、まさに彼のために書かれたようなピッタリフィットのオーダーメイドな作品(背景は知らないですけどね、、)と思えるのです。

主人公ヴィンセントは酒とギャンブルに溺れる自堕落な日々を送っている。そんな日々の中に、突如現れた一人の少年オリバー。彼のベビーシッターを頼まれたヴィンセントだが、シッター代をギャンブルにつぎ込んだり、バーにオリバーを連れ出したりとやりたい放題。このようなヴィンセントの暴走さは、まさに自分勝手を地で行く、マーレーが得意なキャラクター像そのままでとにかく楽しい。しかし、そうした自分勝手の中でも、純な少年と触れ合っていく中で心が徐々に変わっていく様は、マーレーの持つやんちゃっぷりではない、繊細な心の変遷みたいのを見事に表現してくれているのです。これは凄い。

それにこの映画は、ヴィンセントとオリバーの奔放な毎日を音楽、映像ともに全てお洒落に演出してくれるのもいい。大人と少年(もしくは少女)の心の交流は、かつてはチャプリン映画でもよく使われるモチーフでしたけど、本作はそれを現代風にうまくアレンジしている作品だと感じました。

次回レビュー予定は、「1001グラム ハカりしれない愛のこと」です。

preload preload preload