12月 06

クーキー

「クーキー」を観ました。

評価:★★

「コーリャ愛のプラハ」で知られるチェコの巨匠ヤン・スヴェラーク監督が取り組んだ、実写と人形劇を組み合わせたファンタジック映画。チェコ映画は伝統的にこうした人形劇と実写を組み合わせる作品に定評があり、CG全盛の今の時代から見るとすごくレトロに感じてしまうのですが、逆に人形劇であろうと実写であるという強みが、作品中にも出てくる火や雨などの描写が本物であるというところに生きてくるのです。

僕は同じチェコの巨匠ヤン・シュヴァンクマイエルの「オテサーネク 妄想の子供」を学生時代に見て、あのオドロオドロしい生身感は、人形劇であると分かっていても、いい意味での気持ち悪さを感じました。それは人間というのはとかく理想的な人間像を描いてしまうと、生物であるということを忘れてしまうんですが、セックスであったり、病気になったり、生死の瞬間に存在するような、生物という生身のものが出す息というをシュヴァンクマイエル作品には感じるのです。本作はお伽話的なストーリーを基軸にしているだけあって、そのような生身感は感じないものの、森の中に住まう妖精などのシンピチュアルな造形が、人間そのものに表現されていて、一種の異空間を放っているのが独特だと思います。

ただ、本作で惜しいのは、そうした森の中に住む複数のキャラクターが生み出すドラマというのにシンパシーを感じないところでしょうか。「スター・ウォーズ」のタトゥイーンの酒場に集うエイリアンたちのように、異様なキャラクターが単なる背景になっているだけならいいのですが、彼ら(彼女ら)一体一体のクーキーの物語への絡み方が、単なる邪魔をしているようにしか思えず、とてもクーキーに対して協力しているとは思えない。それとは別にゴミ捨て場から追ってくる追手も、何を目的でクーキーを引き戻そうとしているかの根拠も乏しい。何かドタバタしている逃走劇というのは分かるのですが、その1つ1つのエピソード設計が結構いい加減なので、ラストの感動もイマイチピンとこないのです。

映画の設定も、「トイ・ストーリー」であったり、宮崎アニメの要素もあったりして、何かしらどこかで観たところがあるからピンとこないのかもしれません。もっと森の生み出す神秘性に追求すれば、東欧らしい独特の世界観は出たのかもしれないですが。。

次回レビュー予定は、「マイ・インターン」です。

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