12月 05

ベル&セバスチャン

「ベル&セバスチャン」を観ました。

評価:★★★

世界的なベストセラー絵本作家セシル・オーブリーの名作「アルプスの村の犬と少年」を原作に、「狩人と犬、最後の旅」のニコラ・ヴァニエ監督が映画化した作品。「狩人と犬〜」も、実際の犬と大自然を見事に融合させた傑作でしたが、本作でも、少年と犬との交流が本当に自然な形で行われていることにビックリします。日本もCGではなく、生きた動物たちに演技させる演出が上手い国ではありますが、大自然をバックに繰り広げると余計に作品として映えたものになっていると思います。

日本では同じような児童文学、もしくはその後にアニメーションになった作品で有名なのは、「アルプスの少女ハイジ」であったり、「フランダースの犬」であったりすると思います。こちらはどちらも実写映画化されていますが、本作は原作となっている物語があまり知られていないし、背景となっている舞台も、ナチス・ドイツが侵攻してくる暗い時代のヨーロッパを描いているだけに、序盤から中盤にかけて暗い雰囲気を作品が覆っていることも、他の作品に比べ異質な部分かなと思います。しかし、その分だけ、少年と犬だけではなく、その周りの人々も暗い時代を支えあって生きていることがよく分かる。ベルと名付けられる犬は、その中で人々を支え、平和へと導く象徴として描かれていくのです。

自然との融合という意味では、冒頭の子ヤギを助けるシーンから描写がすごく本格的。後半のアルプス越えのシーンも、「エベレスト3D」には及ばないものの、通常の映画枠では考えられないような迫力ある俯瞰の絵が物語を盛り上げていると思います。しかし、逆に物語のほうは、児童文学のところどころに大人なエッセンスは盛り込まれているものの、大きな急展開はなく、平和的にラストまで描かれるのはちと物足りないところ。お話的に熱い部分(ナチス将校とレジスタンスの養母のエピソードとか)はあるので、そのエピソードを集中的に盛り上げるような、おセンチな設定もあってもいいかもと思った次第でした。

次回レビュー予定は、「クーキー」です。

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