12月 07

マイ・インターン

「マイ・インターン」を観ました。

評価:★★★★☆

「恋愛適齢期」、「ホリデイ」などの恋愛映画で知られるナンシー・メイヤーズが、「プラダを着た悪魔」、「インターステラー」のアン・ハサウェイを主演、、といいつつ、この映画の主演はベテラン俳優のロバート・デ・ニーロ。しかし、本作に関しては、主演であるデ・ニーロがむしろ引き立て役になっていて、物語としては準主役級のアン・ハサウェイの魅力がすごく前面に出ている作品になっています。物語の設定上も、本作の演出上も、この一見逆と思える配置が、作品のいい味となっている傑作となっています。

物語の主役になるのは、印刷会社を引退し、妻にも先立たれ、毎日がただ何となく過ぎていくだけのデ・ニーロ演じる初老の男性ベン。彼は、ハサウェイ演じるジュールスが経営するファッション・ベンチャーのシニア・インターンに応募する。ベンチャー企業の福祉事業の一環に行われたシニア・インターン事業。ジュールスは会社のこの方針に嫌気を覚えながら、ベンをスタッフとして迎えることにする。やらせる仕事がないとの先入観で、ベンに仕事を与えなかった彼女だが、職場の細かなことに心を配り、社員から感謝の念を集めるベンに、彼女自身も頼るようになっていく、、

ちょうど、ハサウェイが出演したヒット作「プラダを着た悪魔」(2006年)で彼女自身がインターン(というか助手)を演じていたのが、本作ではハサウェイが「プラダを着た〜」のメリル・ストリープ役をやっているように映りました。しかし、本作ではストリープのような仕事ができる冷酷な上司ではなく、仕事ができるがうえに全てを自分自身でやってしまわないと気がすまず、逆に仕事にも、プライベートにもアップアップしている上司を演じています。それでも彼女のキャリウーマンぶりが本当に見事。単に仕事ができる姿だけではなく、人間としてもすごい魅力を秘めているジュールスという役を好演しています。疲れながらも、その合間に垣間見せるキュートさや、女性としての美しさというのに、本当にクラクラさせられます。久々に、演じて美しい女性というのを、スクリーンで観た思いがしました。

それにジュールスを支えるデ・ニーロ演じるベンもいい。単なるやつれたお年寄りではなく、まだまだ磨けば若いものには負けないという、シニアの魅力を満載に伝えてくれます。日本でも60歳以上のシニア社員が増えてきた昨今、特に若手しかいないベンチャーでも、ベンのような人間味溢れる人がいたらと思う経営者も多いのでは?(笑) ベテラン社員には単純に技術などの経験値だけではなく、なかなか気づくことができない、人としての在り方や先見性みたいなものを察知して動ければ、会社にとっても百人力になるように思います。映画としても、ジュールスをしっかりと支える紳士的な役回りをコミカルに、スマートに演じれるのも、デ・ニーロならでは。これも本当に凄い。

作品としてはラストの演出だけが少し散漫になったかなとは思いましたが、全編通して、非常に密度の濃い見応えがある作品。ラブ・ロマンスというありふれた枠でも、これだけの作品ができると驚かされました。

次回レビュー予定は、「ポプラの秋」です。

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