12月 28

マルガリータで乾杯を!

「マルガリータで乾杯を!」を観ました。

評価:★★★

一昨年くらい前からインド映画の大きな変化について、感想文でもいくつか書いてきましたが、本作もそうした流れの中で生まれたインド映画。ちょうど年末という時期もあって、昨年の鑑賞映画ベスト10の中にもいれたインド映画がありました(「マダム・イン・ニューヨーク」)。それはひとえに、ケバケバしいような着飾ったインド映画ではなく、本当にインドに生きる人たちの視点で描かれた温かみのある人情劇としての映画。歌や踊りも確かに楽しいのですが、そういう要素を抜ききった映画もまた一興できるのがインド映画の凄さなのです。、、と書いておきながらですが、本作はちょっと違った味わいを感じた作品になりました。

予告編を見た感じだと、障害を持った女性とその母親が強く生きていく感動作なのかなといった感じでしたが、それはインド映画の奥深いところ。。そう簡単には終わりません。本作の描いているテーマはいくつかあるのですが、共通しているのは、人と人との間にある見えない境界線というところ。単純にまず観て分かるのは、障害者と健常者との間にある線ですが、それ以外にも、親と子、国と国、異性愛と同性愛、、といろいろな境界線を提示されるのです。正直、最初の障害者と健常者だけでもお腹いっぱいなのに、それ以上やってしまうのは少々やり過ぎ。テーマの提示が多すぎて、肝心のドラマに入っていくことができにくくなっているのです。

しかし、そのやり過ぎ感も、テーマ1つ1つを決して軽はずみに取り扱っていないところも凄いところ。障害者と健常者という線で考えてみても、例えば、序盤にあるライラとバンド仲間のヴォーカル、ニマとの一方的な片想いも、障害者として理解できるところ。一般的に、障害者に優しく接するのは(人間的に普通以上ならば)誰しもする行為なんだろうけど、その優しさを自分への愛情と勘違いしてしまうことはよくあること。これも障害者の側にすれば迷惑な話でもあるけど、障害者全般に対する人間的な愛情と、その人に対する友情や愛情というのは全くの別物と健常者は思ってしまう。しかし、その境界線は愛情という行為が地続きである以上に、誤解されても仕方がないことなのかもしれない。逆に、ライラがニューヨークで出会ったジャレッドはそうした壁(境界線)をも平気で超えてくる猛者でもあり、こういう好対照なキャラクターがライラの周りに現れる男性として配置されることが、この映画の面白いところでもあるのです。

ただ、やっぱりいろんなテーマを盛り込み過ぎで、せっかくの母娘の愛情物語がかなり薄まってしまったのが残念なところ。登場している俳優陣の演技も抜群(個人的には、ライラの友人ドゥルヴがいい味を出している)なだけに、もったいないことをしている作品だと感じます。

次回レビュー予定は、「母と暮せば」です。

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