3月 08

ゼロ・ダーク・サーティ

「ゼロ・ダーク・サーティ」を観ました。

評価:★★★☆
(★が星1つ、☆が星半分、★★★★★が最高で、★が最低)

映画に限らず、傑作といわれる作品にはどこか尖ったところがある。この「ゼロ・ダーク・サーティ」という作品の尖ったところは、圧倒的なリアリティがまさにそうだろう。ビンラディンがどうやって捉えられ、そして抹殺されたのか。。終盤の突入シーンは映画というフィクションと分かっていながら、映像はまさにその場にいるかのような迫力。本年度のアカデミー賞にも作品賞をはじめ、主要部門にノミネートされた力は至る所に感じることができる作品なのだ。

でも、僕はこのリアリティが良さでもあり、欠点にもなっていると思う。それがビグロー監督が、まさにアカデミー賞作品賞を受賞した「ハート・ロッカー」と比べるとよく分かる。「ハート・ロッカー」も爆弾解体処理班という仕事に取り憑かれた男を、リアルな映像で迫っていたが、そこには爆弾テロという驚異の中で混乱し、ある一線を超えてしまう男たちのドラマがあった。本作でもドラマはないとはいわないが、ビンラディン暗殺計画という社会的背景があまりにも大きすぎて、その事件に主人公たちのキャラクターが押しつぶされてしまっているように思ってならないのだ。これは「ライフ・オブ・パイ」がため息が出るような映像美を、脚本力が超えられなかったのとある意味同じなのかもしれない。

それにしても映像や音響といった意味では、「ハート・ロッカー」よりも本作のほうが上だろう。「ダイ・ハード ラスト・デイ」のような作られた迫力の面白さはないが、十二分なほど映画館で見るに値する作品だと思う。

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