3月 24

銀の匙

「銀の匙 SilverSpoon」を観ました。

評価:★★★★★

荒川弘の同名コミックを、「ばしゃ馬さんとビックマウス」の吉田恵輔監督が映画化した作品。あまり舞台にならないところだからこそ、映画になるということもあるのだけど、本作の舞台は、普段足を踏み入れることはない農業高校。田舎育ちの僕の実家にも、ご多分に洩れず、農業高校が近くにあって、僕も入学を考えたこともあった(農家になりたいというよりは、バイオ系の学科があったから。昔、生物得意だったんで。。)。農業高校に行くということは、ほぼ100%農家を継ぐということが大義になるわけだけど、この映画の主人公・八軒は、どちらかというと、学業が嫌で、農業高校に逃げてきたという設定。農業に縁もゆかりもないサラリーマン家庭に育った八軒にとって、農業高校での生活はとまどいも多い中で、夢がない自分にとって、夢を探す場になっていく。

農業高校出身の人には、きっと”農業高校あるある”が多い青春ドラマなのだろう。少し前の映画だけど、「ロボコン」という高専が舞台の映画では、”高専あるある”が高専出身の僕には非常にドストライクだっただけに、農業高校の味わいが本作でどこまで表現されているかを、出身者に聞いてみたい感じでもあります。

農業が取り巻く厳しい環境は、農家でない私たちでも十分感じるところ。農業、畜産など、食が中心となる生活や食に対する意識をいろいろ再発見させられながら、日本の農業が抱える問題も、肌で感じることができます。

でも、やはり農業映画である前に、高校が舞台という学生青春ドラマにしっかりしたててあるのがいい。厳しい社会という現実がありながらも、同時に高校の中で仲間たちと様々な出来事、時間を共有しながら、人間として成長していく八軒の姿がすごく逞しく感じます。それぞれが抱える夢と問題を着実に捉えながら、サブキャラクターも含め、一人一人丁寧に描いていることも好印象。冒頭は、農業高校の独自の世界観で戸惑う八軒たちのコミカルな演技に笑いながら、中盤以降は、各個人がしっかりとした成長を見せてくれる。吉田監督の持ち味が十分に出た傑作になっています。

僕が好きなのは、やっぱりベーコンを作って、みんなで食べるシーンかなー。本当に美味しそう。農業高校、行きたくなるぞ。

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