2月 18

百円の恋

「百円の恋」を観ました。

評価:★★★★★

引きこもりのニートで、実家のすねかじりでしかなかった一人の女性が、ボクシングジムでの出会いから、身も心も自立していくというお話。映画のタイトル「百円の恋」は、私の恋の価値なんて、百円もないというところからきていますが、いやいやなかなか映画自体はパワフルなものでした。映画界では潜水艦映画とか、これにはハズレがない(少ない)というジャンルがあるのだけど、ボクシング映画もその一つ。女性が主人公ということで、考えるとミシェル・ロドリゲス主演の2000年公開の映画「ガール・ファイト」や、ヒラリー・スワンク主演、クリント・イーストウッド監督でアカデミー賞もとった2004年公開の「ミリオンダラー・ベイビー」など、力強い作品があるのです。本作が、その二作品に劣ることないパワフルさを感じる。これも、映画のキーになる後半のボクシングシーンが、すごく臨場感たっぷりに描かれていることが要因でしょう。この部分を観るだけでも、この映画の価値はあると思います。

主人公・一子は、ボクシングに出会うまでは自堕落な生活を送っていた。それが実家での確執、家出、ボクシングジムに通う男との不思議な出会いから、運命のようにボクシングと出会っていくのです。物語としては、背景でしかなかったボクシングというものに、一子自身がすごくハマりこんでいく様がすごく痛快。直情型で、思いがはやると、口より先に手が出てしまう一子は実家では疎まれていた存在だったが、ボクシングという場所に居場所を見つけてから、どんどん輝いていく。最初は彼女自身が異質な存在であったのが、ボクシングによって目覚め、逆に周りの普通に生きている人たちこそ、実はおかしい存在になっていってしまうという対称的な物語の作り方も上手い。一子の目線に立ちながら、観ている側もパワフルになってくるのが凄い。これはもう最高です。

主演は、「0.5ミリ」などの作品で怪演を続ける安藤サクラ。実は別の作品で、彼女が脇役になっている作品を久々に観た(後にレビュー予定)のですが、もう主役を喰ってしまうほどの存在感は、日本映画界を代表する女優に成長した証だと思います。「0.5ミリ」のサワ役もそうでしたが、自然体のままの身振り素振りが、そのまま名演になってしまう域ですね。日本で、それができるのは、女優ではもう吉永さゆりくらいだと思います。監督は「イン・ザ・ヒーロー」の武正晴監督。「イン・ザ・ヒーロー」は残念ながら未見ですが、今後が期待の監督さんです。

次回レビュー予定は、「ミュータント・タートルズ」です。

preload preload preload