7月 29

インサイド・ヘッド

「インサイド・ヘッド」を観ました。

評価:★★★☆

2Dの日本語吹替え版にて。

脳内にある5つの感情をもとに、ある少女の11歳の成長期を描いたアニメ作品。ちょうど、今年の5月に同じように頭の中の会議で、主人公の行動を決めていく「脳内ポイズンベリー」という邦画が公開になっていますが、素材は同じでもいくつか違いがあります。まず、本作は5つの感情(”よろこび”、”かなしみ”、”いかり”、”嫌悪”、”恐れ”)にフォーカスしているのに対し、脳内~は5つの脳の機能(”理性”、”ポジティブ”、”ネガティブ”、”衝動”、”記憶”)に焦点が当たっているということ。それに本作は11歳というちょうど少女期から青年期にかかる思春期の女の子に対し、脳内~は三十路を過ぎた、ちょっと出遅れた大人の女性というところも違っていたります。アニメと実劇、アドベンチャーと密室劇という違いもそれぞれ鮮明で、どちらが面白い・つまらないというわけではないですが、どちらも脳内のことを扱っているのに対し、これだけ作風が違ってくるのか、、と見ていて単純に楽しかったりします。

普通に人間関係を営んでいる人なら、人というのはすごく感情によって左右される生き物だということがよく分かると思います。仕事でも、家庭生活でも、理性的に(ロジカルに)考えれば正当なことでも、喜びながらするのか、それとも怒りながらするのかで、物事の結果というのは180度大きく異なってくることも満更あることなのです。よくビジネス向け啓発本に書いてあることですが、物事に手をつけるには第一感情を捨てるべきといわれます。例えば、駅で酔っ払いに絡まれたときなんかも、イラッとするでしょうが、イラッとしたまま対応してしまうと、往々にして喧嘩になったり、警察事になって、思う以上に双方傷つくもの。そのイラッとする第一感情を捨て去って冷静に考えれば、適当にあしらうか、それでも絡んで来たら駅員なり、第三者に助けを求めたほうがより自然と解決するのではないかと分かるはず。しかし、なかなか第一感情を捨て去ることもできないもの。本作は、そんな人の心の中に渦巻く感情というやつをキャラクターにし、人の行動とうまくシンクロさせて描いている作品なのです。

本作が、「脳内ポイズンベリー」と違うのは、あくまで感情というところにフォーカスを当てたことで、それぞれの感情がどのように行動に影響を与えるのか、端的に分かり易くなっていることだと思います。「脳内~」がうまく脳内のキャラクター像と、主人公が生み出すドラマがシンクロできなかったのに対し、本作では主人公の少女の物語をすごくシンプルにし、彼女の行動を幹として支える感情たちがダイナミックに動く(、、といっても、脳内限定ですが笑)ことで、脳内のキャラクターたちにドラマを生み出しているのです。主役となってくるのが、予告編でもあるように”よろこび”と”かなしみ”の二人(?)。お互いが相反するような感情でもある二人が、どうやって相互を生かすような働きをしていくのか、、これが10代の思春期にさしかかる複雑な少女の気持ちを素直に反映しているのです。

脳内をすごく広いフィールドを使いながらアドベンチャー劇に仕上げているのがなかなか。脳科学や心理学などをうまく解釈して、独自の世界観を構築しているのは、お話のアイディアをうまく物語像にもっていくピクサースタジオならではの腕の良さを感じます。ただ、お話の結論があまりに分かり易いところに着地してしまうのが少々残念なところ。上記したように脳内はドラマティカルに動くのに、その主役になる少女ライリー自身のお話はすごく小さく収まってしまうのも(うまい演出だとは思いながら)、少々物足りなくもあります。

次回レビュー予定は、「駆け込み女と駆け出し男」です。

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