11月 16

俺物語!!

「俺物語!!」を観ました。

評価:★★★★☆

作画:アルコ×原作:河原和音による同名少女漫画を「映画 鈴木先生」の河合勇人監督が映画化した作品。主演の豪傑男・剛田猛男を演じるのは、「HK 変態仮面」でもキワモノになる変態仮面を体現し、本作の猛男役を演じるのに30kgの増量をしたという鈴木亮平。ヒロインの大和凛子役を永野芽郁、猛男の親友・砂川誠を坂口健太郎が演じています。

僕は原作をタイトルくらいしか知らないのですが、予告編を見ても、ある程度の想像がつくように典型的なミス・コミュニケーションによる誤解が元で、話が展開していくという構成。その根底にあるのが、誰しも1回は持ったであろう、「どうせ、僕なんか〇〇だから」という自己否定の感情だ。僕は自分自身の障害を持っていることもあって、痛いほど、この気持ちがよく分かる。小さい頃、友だちと遊ぶときにも特別扱い。それは優しさとは分かっているのだけど、自分が決して友だちの輪の中心には入っていけないだろうし、話題の中心になるかこともない。「どうせ、僕なんか、、」という感情に苛まれていた。これは恥ずかしいながら、大人になった今でも抜け切ることはできない。仕事でも、プライベートでも、自分はどうせ相手の眼中には入っていけない。だから、そこでコミュニケーションが終了してしまい、高い壁を自分でも作ってしまう。それを自分でも打ち壊したいし、打ち壊して入ってくる人(意図しない破壊工作をされるのは心外だが、、、笑)をどこか求めているのだ。

本作の主人公・猛男も、図体がでかく、力持ち、おまけに人に対して優しくて、関わった人は全て心が温かい気持ちになる。しかし、熊みたいな風貌で、女性には決して振り向いてもらえず、慕ってくるのはいつも男ばかりだった。そんなある日、街中で不良に絡まれている女子高校生の凛子を助ける。凛子はその猛男の行動に一発で虜になるが、猛男自身は幼なじみで美男子の砂川と凛子が会話しているところを目撃したことから、凛子は砂川に恋心を抱いていると誤解していくことになる。。

話の設定的には、こうした誤解を元に展開していくというのはよくあるものですが、クマ男・猛男という強烈なキャラクターが典型的な展開をより面白いものに仕上げています。そして何よりいいのが、猛男を囲む周りの人物たち。特に、ヒロインの凛子を今の日本ではまずいないであろう、大和撫子(やまとなでしこ)的な優しさ満載のキャラに仕立てたことがいいんです。ヒロイン役の永野芽郁も、彼女の代表作になるだろうと思うくらいの名演を見せています。猛男の家族、そして何を考えているかわからない親友・砂川(坂口健太郎もいい味を出しています)も、猛男の想いをしっかりと支えるキャラクターとして、作品の中で輝いています。これは実にいい。

原作は未読なので分からないのですが、大ヒットコミックとして、しっかり立脚したものだろうと思います。とかく映画作品となると崩れてしまうものも多い中、本作はお話として面白い要素はそのままに、映画としても大事なテーマをうまく織り込んでいる秀作だと思います。コミック原作作品だと侮ることなかれ、映画ファンにも観てもらいたい一作です。

次回レビュー予定は、「ラブ&マーシー」です。

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