12月 04

キングスマン

「キングスマン」を観ました。

評価:★★★★

「キック・アス」でダメダメヒーローを主人公にした異色ヒーローモノを作ったマシュー・ヴォーンによる、今回も異色な形のスパイムービー。今年は「007」の公開年ということもあって、本作から年明け(2016年)公開のスピルバーグによる「ブリッジ・オブ・スパイ」まで、なぜかスパイ映画の当たり年。その中にあって、本作はミニシアター系を中心とした限定公開でしたが、一部メイン館まで広げるという、なかなかのヒットを飛ばしています。これも「キック・アス」で異色ながら本流、本流ながら異色という味をうまく出す監督の力量というところが大きいかなと思います。

スパイ映画の本流というと、僕なんかが思いつくのがジョン・ル・カレの小説のような硬派なもの。映画でいうと、「裏切りのサーカス」や「誰よりも狙われた男」なんかの作品。カレ以外でも、「ボーン・アイデンティティー」シリーズや、少しアクション色が強いものの、「007」もここに含まれるのではないかと思います。逆に、スパイモノの異色というと、とにかくトム・クルーズの映画になっている(笑)「ミッション・イン・ポッシブル」シリーズや、子どもがスパイを演じる「スパイ・キッズ」シリーズ、コメディだったら意外に好きな「ゲット・スマート」のような作品もあったりします。本作は、その分類でいうと明らかに異色系。「ボーイ・ソプラノ」ではないですが、スパイを一から養成し、一流のスパイに仕立てていくという”ハリー・ポッター”的な成長要素を盛り込み、敵の描写などにもコミカルなコメディ要素がふんだんに盛り込まれているのです。

でも、そうはいいながらしっかりとハードボイルドな要素も両立させている、これが本作の面白くしている要因なのです。主人公エグジーがスパイとしてスカウトされたのも、彼の父親が同じスパイとして活動し、その途中で不幸にも命を落としたことが起因していること。エグジーを育てるハリーも、同僚だったエグジーの父親代わりに、彼をシニカルに、そして暖かく見守っていること。そして、その裏で暗躍していく敵ヴァレンタインも、キャラクター上は破天荒な面白キャラながら、その綿密な抹殺計画は非情そのものに実行していくこと。。。など、こうした本格的なスパイ映画の要素をしっかりエッセンスとして盛り込んでいることが、映画を単純な異色モノにしない、ピリリとしたスパイスの役割をしているのです。これは凄い。

「キック・アス」も同じような雰囲気をもった作品でしたが、テンポの良さなどは明らかに本作のほうが上。個人的には、非情なまでに人が(敵も味方も)バッタバッタ殺されるのはやや閉口感があるものの、観て損な作品ではないと思います。

次回レビュー予定は、「ベル&セバスチャン」です。

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