10月 02

ピクセル

「ピクセル」を観ました。

評価:★★★☆

3Dの字幕版にて。

1980年代のゲーム大会の映像を宇宙に向けて発信したところ、宇宙に住むエイリアンたちがそれを宣戦布告と勘違いし、ゲームに描かれたキャラクターで侵攻してくるという結構突拍子もない設定の作品。監督は「ホーム・アローン」、「ハリー・ポッターと賢者の石」などの手堅い作品作りに定評があるクリス・コロンバス。主演は「靴職人と魔法のミシン」のアダム・サンドラーが演じています。

ちょうど作品の観た順とはシンクロしていません(笑)が、「靴職人と魔法のミシン」の感想文を最近上げたばかりで、サンドラー作品というのを連続して振り返ることができるのはファンとしては嬉しいところ。ただ、本作ではやはり予告編から、各ゲームの主要キャラクター(パックマンやマリオ、ドンキーコングなどの日本でもお馴染み)がスクリーン狭しと暴れまわるのがメインになってしまっているので、サンドラー色は少し薄いかなとも感じます。でも、それでもサンドラー目線で見ると、彼のキャラクターが主人公の冴えないゲームオタク・サムのキャラクターにピッタリとハマっていると思います。コメディ演出としては一定枠以上のものにはなっていないものの、サンドラーがうまく役の中で暴れてくれているので、作品の質が彼のおかげで一段上がったものになっているのです。

とはいうものの、やはり映画の見所は何といってもゲームキャラクターたちでしょう。本作に登場するキャラクターはTVゲームのキャラというよりは、1980年代初頭のアーケードゲームに登場するキャラクターたち。もちろん、後々にもファミコンに移植されたゲームも多いのですが、”ピクセル”という邦題にもあるように、ドットがまだ荒い時代のキャラクターたちが中心となります。なので、チラッと出てくるマリオでも、ドットの1つ1つが浮き出たようなキャラ描写になっています。以前、ディズニーアニメ「シュガーラッシュ」でもゲームキャラクターたちがたくさん登場していましたが、あれよりも時代は前の30~50代の人たちなら楽しめるくらいの設定になっているように思います。

あと、本作は是非3Dでの鑑賞をオススメします。僕もIMAX3Dで観たかったのですが、予定が合わず、字幕版3Dでの上映館を求めて、神戸まで出張したくらいです(笑)。でも、それだけの価値はありました。ゲームキャラクターたちが3Dで浮き上がることにより、やや2Dっぽい実写の登場人物の対比が映像的に上手くとれているのです。やはり、もともとはゲームの登場キャラなら、映像的にもゲームっぽい描写になるほうが見ていても楽しい。コメディ作品としてはもう少し物語に奥行きが欲しいし、戦闘シーンももうちょっと個別に多くして欲しい(なんだかラストでの大戦争は無理やり感がありまくり。。)なという注文はなくはないですが、映画の設定自体からワクワクさせるような作品の作り方というのもありだと思いました。

次回レビュー予定は、「攻殻機動隊 新劇場版」です。

10月 01

ジェームス・ブラウン

「ジェームス・ブラウン 最高の魂(ソウル)を持つ男」を観ました。

評価:★★☆

日本でも、”ゲロッパ”で知られる(昔、そんな名前の映画もありましたが、、)ソウル歌手、ジェームス・ブラウンの半生を、「ヘルプ 心がつなぐストーリー」のテッド・テイラー監督が映画化した作品。「レイ」や「ウォーク・ザ・ライン」など、一頃はミュージシャンの伝記映画というのは活況でしたが、ここのところミュージシャンに限らず、伝記映画自体が下火に感じるのは気のせいでしょうか。。主演は「42 世界を変えた男」で、黒人初のメジャーリーガー、ジャッキー・ロビンソンを演じたチャドウィック・ボーズマンが演じています。

ちょうど、ボーズマンが演じているから、、というわけでもないですが、何となく印象が「42」を観たときと同じものを、本作でも感じました。ジェームス・ブラウンのソウルフルなライブイメージ(実際を観たことがないので分からないですが)が、そのままスクリーンに投影されていて、迫力満点。冒頭がいきなりおかしな集会シーンでの暴発から、回想という形で始まっていくので多少の違和感はありましたが、物語も結構そつなくまとまっていると思います。いい映画ではあるんですが、何か、どこかありきたり過ぎて物足りない。これも一頃、伝記映画が立て続けに出てきたことによる小食現象(観すぎていて、しばらくはいらない。。)ということなのかもしれません。

それともう1つの映画にイマイチのめり込めない理由としてあるのが、映画の進み方として冒頭のシーンに帰ってくるという帰結がある程度決まっているからということもあります。幼い頃に母から見捨てられたトラウマ。それを抱えながらも、ソウルからファンクへと魂の叫びを世の中に発しながら、ミュージシャンとして成功の階段を上がっていくジェームス。しかし、心の中の空虚さは、彼が有名スターになることで埋まり切るものではなく、結局それが周囲との軋轢を生むようになる。そこから一転、物語は冒頭の崩壊しかない方向へと動き出していくのです。「ウォーク・ザ・ライン」とかもミュージシャンとしての崩壊(=苦しみ)が物語の要素としてはあるんですが、あの作品はそれを越える愛という点に結実させたから、映画としては見応えのあるものになっていた。対して本作は、とことん崩壊に進むしかないところに見ていて多少のゲンナリ感を感じてしまうのです。

でも、伝記映画としては一定水準以上のデキにはなっているとは思います。ボーズマンもいい演技なので、もう少し彼個人が引き立つ映画に早く出てもらいたいなと思わずにはいられません。

次回レビュー予定は、「ピクセル」です。

9月 28

ぼくらの家路

「ぼくらの家路」を観ました。

評価:★★★★★

ベルリンの街を舞台に、10歳の少年ジャックとその弟で6歳のマヌエルが、突然いなくなった母を求めて、街中を彷徨い旅する3日間を描いたドラマ。日本での公開は2015年ですが、製作年は2013年と少し前の作品ということになります。あまり言いすぎるとネタバレにもなりますが、これはドイツ版の「誰も知らない」だと思いました。母が突然いなくなり、取り残された子どもたちが街を彷徨い行くというのは同じプロット。ただ、「誰も知らない」は家はあるものの、子どもたちが自力で生きていく姿を描いたのに対し、本作は家には入れない(母親が鍵をもっていなくなったため)ものの、養護施設に預けられるという設定など、主人公二人の少年たちに周りの大人たちが何らかの形で関与しているというところが違うところになっています。

これを見ていると同じような作品でも、日本とヨーロッパとでは国民性が少し違うのかなと思います。日本では孤独死というのが話題にもなるように、「誰も知れない」で描かれるような子どもたちの社会というところでも、周りに関わって生きていくことがみっともないという視点があるのかなと思います。助けを求めたいときは大声で何かしら叫べばいいのに、それを恥と思ったり、逆に、どこに助けを求めればいいかも分からない。それは教育という問題もあるかもしれないですが、どこか自分のことで精いっぱいで、周りのことは関わらないという少し閉鎖的な社会の雰囲気を感じます。逆に、本作でも子どもたちは必死に生きていこうというのは同じ。それでも、周りの大人たちの社会に対し、少しでも利用しようというか、文字通り、サバイブしていく子どもたちの姿がある。島国という列島文化と、生きていくためにはしのぎを削らないといけない大陸文化の差といっては元も子もないですが、どこの厳しい社会でも生き抜いていこうとする気合が、本作には感じられるのです。

予告編で観れるように、主人公・ジャックを演じるイヴォ・ピッツカーのとかく頑固で力強く、それでいて友だちや弟想いな優しさを内面に秘めているという繊細な演技が見事の一言。それに従順についていく、弟マヌエル役のゲオルク・アルムスもしっかりついていくのが凄い。二人が街中をサバイブしていく中で、壁を乗り越えたり、荷台に駆け上がったりと、すべての一挙手一投足がとても自然で、本当にストリートを生きている子どもたちのようなリアルさを感じることができます。しかし、その辺りにあるような子ども主役のスラム映画とは一線を画しているのが、ダメな母親でも必死にすがって生きたいというジャックとマヌエルの真摯な目線に他なりません。この物語の核がしっかりしているからこそ、少年たちの自然な行動も相まって、作品の力強さに貢献していると思います。

必死に生きて、母親を探そうと一途なジャックとマヌエルの旅。同じ街中で、そんなに大きな距離を移動する旅ではないものの、彼らが旅の過程で感じたことが、ラストのジャックの行動へつながっていくのです。人生は長い旅、ジャックとマヌエルにとって、この三日間は人生の上で貴重な旅となるのです。

次回レビュー予定は、「ジェームズ・ブラウン 最高の魂を持つ男」です。

9月 24

靴職人と魔法のミシン

「靴職人と魔法のミシン」を観ました。

評価:★★

アダム・サンドラー主演のハートフル・コメディ。ニューヨーク、マンハッタンのローワー・イーストサイド地区で靴職人として修理店を営むマックス。年老いた母親との気ままな二人暮らしだが、何不自由ない単調な毎日を送っていた。そんなある日、仕事用の電動ミシンが故障し、地下で長年眠っていた古い足こぎミシンを使うことになる。ところが、その足こぎミシンで修理した靴を履くと、靴の持ち主に変身できるという魔法のミシンだったのだ。

サンドラー自身はコメディ俳優ではありますが、過去の出演作を見ても、「ウェディングシンガー」、「50回目のファースト・キス」、「もしも昨日が選べたら」と、しっかりとしたラブドラマやヒューマンドラマの上に、コメディの要素を乗せるのが上手く、ニコニコと笑えながらも、最後はキュンと切ない想いをさせてくれる素敵な作品が多いのが特徴。ですが、その土台となるべきドラマがしっかりしていないと、コメディアンといっても、ジム・キャリーのような強烈な個性を発揮しないサンドラーの演技は、どこか間延びしたノッペリとした印象になるのも事実。サンドラー作品でいい作品を当てるのは意外に難しいのです(笑)。

この作品、ポイントになるのは靴を履いただけで、その人に変身できるということ。途中に亡くなっている人の靴を履くシーンもあるのですが、あの変わり方からいうと、その人の履いているときの状況に変身できるということみたいです(笑)。今の状況だと、父親になり替わるシーンの辻褄が合わないしなーと思いながら観ていると、アレ、作品を楽しめていないなーという自分に気づくのです。この変身するという設定は面白いのは面白いのですが、子どもっぽく散々楽しんでいる割には、年老いた母親のために父親になるくらいにしか、物語としては貢献していないように思うのです。最後のドタドタ泥棒劇と、最終的なオチもどうも決まっていない。せっかく面白そうになる設定を十二分に活かしきれないまま、物語としても、なんだか腑に落ちないオカシナ設定に持っていたように思います(ネタバレなので、書けないですが。笑)。

次回レビュー予定は、「ぼくらの家路」です。

9月 18

Dear ダニー

「Dear ダニー 君へのうた」を観ました。

評価:★★★☆

ジョン・レノンが若手のミュージシャンを励ますために書いた手紙が、運命の巡り合せで43年の時を経て、本人に届いたという実話を基に、スターの絶頂期を過ぎたミュージシャンが、家族や自分を振り返り、改めて自分の人生を変えていくというお話。一部は実話という注釈が映画の冒頭にあり、エンドクレジットでレノンの手紙を受け取った本人が出てくるので、実話ではあるんでしょうが、家族のドラマ部分には一部脚色があるのかなと思います。往年のスター、ダニーを演じるのは、本当に久しぶりにスクリーンで観るアル・パチーノ。脇も、アネット・ベニング、クリストファー・プラマー、ジェニファー・ガーナーなどのアカデミー級のスターが固めます。監督は、本作が初メガホンとなるダン・フォーグルマン。

運命というのは容易に変えることができないもの。本作のダニーのように、一流で居続けるために、プロデューサーやら作曲家やらの言うとおりに、ただ黙々と仕事をこなしてきた人にとって、なかなか自分はどうありたいかという問いをするというのも難しいもの。そんなダニーがスターの階段を昇る直前に、ジョン・レノンは彼の未来を危惧して手紙を送る。しかし、運命という名のイタズラによって、手紙は本人に渡ることはなく、43年もの時が流れてしまった。ダニーは今でも有名な歌をバックに、スターのトップの座ではないまでも、ツアーをすれば、往年のファンたちによって何不自由ない暮らしを保証されている身。ところが、ジョンからの手紙を時を経て受取り、今までおろそかにしていた自分や家族の存在を考え始める。一大決心し、音信不通だった家族の元に、ダニーはかけつけるのだが。。

ダニーを演じるアル・パチーノの演技をまじまじと見るのは、「オーシャンズ13」以来。アダム・サンドラ―の「ジャックとジル」にもカメオ出演していたみたいですが、その記憶はあんまりないくらいです。「オーシャンズ~」からは8年くらい経っていますが、見かけは少し老けたものの、アル・パチーノここにありという演技力のすごさを見せてくれます。特に、アネット・ベニング演じるメアリーとのホテルのやり取りは見事の一言。台詞はちゃんとあるのでしょうが、アドリブをも織り交ぜて、軽妙な演技を魅せつけてくれます。冒頭のコンサートシーンも含め、歌の声量感も抜群。彼が好きな人はもとより、演技を勉強している人も、是非参考にしてもらたいなと思える作品です。

映画のほうは、自分を変えたいと思っているダニーが、スターであるという一線をなかなか越えられないもどかしさの中で、それでも着実に幸せを掴もうとしているのが微笑ましい。中盤に、物語のキーとなる家族へ向けた歌を自作し、プライベートコンサートにて披露するシーンがあるのですが、これが本当にもどかしい。映画ということを考えると、一気にハッピーエンディングにして欲しいという観る側の論理で観てしまうのですが、その中でも自らのアイデンティティを変えるのは難しいという、人生の教訓めいたものを感じさせてくれます。

それでも、ラストに小さな幸せを感じられるのは素敵。傷つきながらも、一歩一歩進んでいく。その中にご褒美のように、幸せというのは隠れているものなのかもしれません。

次回レビュー予定は、「靴職人と魔法のミシン」です。

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