3月 14

2013年3月11日は、東日本大震災から2年が経過する。様々な番組、行事なども行われているが、人の死に関わる本を2本読了したので、立て続けに紹介したい。

1冊目は「エンジェルフライト 国際霊柩送還士」

この本を読み始めたのは、ちょうど2013年1月21日、アルジェリア人質拘束事件が起きたときだ。多くの日本人現地スタッフが犠牲となったが、そこで犠牲となられた方が本国に日本国政府専用機で移送されたことを記憶されている方もいるだろう。本著はそうした国際遺体搬送を請け負う、霊柩送還士たちの姿に迫ったノンフィクション作である。

日本国内でも出張や旅行中の事故などで、住んでいる場所から遠くで人が亡くなった場合の遺体搬送は正直大変だ。それが海外ともなると、距離という問題もそうだが、国の文化や風習による遺体の考え方、それに伴う処理の技術にも大きな差がある。それに(嫌らしい話ではあるが)ビジネスという側面であっても、葬儀社ごとのポリシーの差によって、取り扱われ方が大きく異なる。家族や故郷に遺体を還す。言葉で書くと単純だが、その裏側には大変な苦労があることがよく分かるのだ。

僕はこの本を読んで、日本人の亡くなった人に対する想いというのがとても素晴らしいものだと、改めて気づかされた。僕自身は人には魂というものはあると信じていて、魂が身体に宿って、はじめて人というものが成り立つと考えている。魂の抜けた遺体というものは、単純に見れば、”モノ”でしかない。それでも、日本ではほとんどが最終的に火葬にしてしまう遺体に対して、適切な防腐処置をし、死に化粧をし、葬式を上げて送り出す。「ツナグ」の書評でも書いたが、そこには残された人が、それぞれの想いの中で故人と真正面に向き合い、別れを惜しみ、悲しみ、整理する瞬間が必要ということを暗に文化として示している。これは改めて素晴らしいことではないかと思うのだ。人が亡くなった時点で、その人はいなくなるのかもしれないが、その魂は残された人たちの中で永遠に生き続けるものなのだ。

この本に登場する人たちは寝る間も惜しんで、海外で亡くなった日本人、そして日本で亡くなった外国人たちを遺族のもとに還す仕事をしている。それもどんなに傷ついた遺体であっても、できるだけ元の元気な姿に戻す努力もなされている。それはある意味、故人の魂を、遺族のもとに”還す”仕事ともいえるのだ。

2月 24

名は体を表すけど、名刺はビジネスチャンスを生み出す。僕自身はあまり外回りな仕事ではないので名刺を交換する機会はそんなに多くはないけど、やはり印象的な名刺の人は覚えている。「部長」や「主任」などマネジメントクラスの役職が書かれている人にはそれなりに敬意を払うし、「研究員」とか「工学博士」とか書かれている人には頭が上がらなそうだなと、名刺を貰った瞬間に思わされる。あと、たまにあるのが写真入りの名刺を貰うとき。数年前とかの写真で、本人と全然似てないときは思わず笑ってしまう。そうたかが名刺と思うが、難しい名前なんかの場合は話すきっかけにもなるし、日本固有のこのビジネス文化は意外に重要なのではないかと思うのだ。

クックパッドといえば、知る人は知っている料理レシピの共有サイト・共有アプリで大きくビジネスを伸ばしてきた会社だ。最近はSNSのような料理を使ったコミュニティの促進や、ゲーム要素を取り入れたポイントなど、単なるレシピ共有に留まらない拡がりを見せている。まだ、ガラケーの時代に1,2度使ったことがあるレベルでは、レシピだけでどうビジネスをしていくのか疑問符がついたけど、食材配達との連携などより使いやすいサービスというところにも注力をしている。

前に「信長のシェフ」の書評でも触れたけど、料理は作る方も、食べる方も、人間にとってはすごくプライベートな営みだと思っている。少し話はそれるが、笑福亭鶴瓶もあるラジオ番組で、”あの不味いイタメシ屋で、人生の大事な一食を無駄にしてしまった”と語ったが、1つ1つの食事を大事にすることが人生を豊かにするのではと最近は感じている。それは食べるもの(料理、素材)というのもそうだけど、食べる環境であったり、誰と一緒に食べるのかということもそうだろう。大学のとき、急性胃腸炎で一週間点滴だけで過ごしたことがあって、退院後初めて食べた食事(某チェーン店のドーナツというのが失敗したがw)が本当に食べれるということの幸せを感じたものだ。食は工夫をすれば、人生を楽しくしてくれる。クックパッドはネットの世界で、それを実現しようとしているのだ。

タイトル通り、クックパッド社員の名刺にはある秘密がある。それは本著を読んでもらえば分かるが、人生の楽しみである食を使って、人を幸せにしたいという社員の心が詰まっているのだろう。そして、そういう人たちが集まっているということはモチベーションもすごく高いのではないかと思う。そうした名刺の工夫をするだけで、社会人としてどういう人間かを、名前だけでなく、会社全体で何を目指しているのかをも表しているというのが何とも素敵だ。

2月 17

野村克也という人物は、僕は監督でしか知らない。まずは東京ヤクルトの監督で優勝し、万年Bクラスで低迷していた阪神の上昇基盤を作り、そして楽天を勝てるチームに育て上げた知将。僕の知っている野村監督というのは、この3チームを渡り歩いた監督という姿。そして、なんといってもヤクルト時代に築き上げたID野球という分析野球の人というイメージがありました。

僕が本格的にプロ野球を応援しだしたのは2009年シーズンからなので、当然、楽天におられたときの試合も観戦したことがあります。腹の出たおっちゃんという見た目な感じはそうでしたが、この本を読んでいると野村監督がどういう野球像を、そして監督像を描いておられたが、よく分かります。ヤクルトでも、阪神でも、楽天でも、ノムさんが入られる前は失礼ながらもBクラスをフワフワしている弱小球団だった。阪神時代は在籍中に結果は残せなかったけど、ヤクルトではリーグ優勝と日本シリーズ制覇、楽天でも万年下位だったチームをクライマックスまで連れて行った。メディアの取り扱われ方はいろいろあるかもしれませんが、単純に実績だけを見ても、なかなかの凄腕だということが分かります。

分析野球というと、よく野球中継や野球ゲームにも出てくる、ストライクゾーンを9つに分割するという配球を映し出すのを「野村スコープ」というらしい。野球を”とりあえず何が何でも打て、そして投げろ”という精神論ではなく、それぞれの選手のクセを分析し、そしてそれに対応するようにプレーをするというID野球というスタイルは日本の野球界に大きなインパクトであったと思います。

それにしても、この本には凄くいい言葉も書かれている。参考までに。

野球は「間」のスポーツだからだ。ピッチャーが一球投げるごとに時間があく。そして、これが何を意味するかといえば、「このあいだに考えろ、備えろ」ということにほかならない。一球ごとに変化する状況の中で、どういう選択をするのがいちばんベストなのか。即座にそれを考え、準備する時間が与えられているのである。(p.160)

サッカーのように動き続けるスポーツでない野球。こういう静止した時間のあるスポーツは、一般的に考える、考えてしまうところに強さ弱さが出るといいます。ここが野球の魅力でもあるんです。

人間は、生涯学習である。その意欲をなくしたらおしまいだ。進歩も成長もない。「組織はリーダーの力量以上に伸びない」と私はたびたびいっているが、だとしたら、リーダーすなわち監督自身が力量を伸ばし、器を大きくしなければ、チームもそれ以上成長しない。(p.120)

これは野球だけでなく、教育観や組織論にもつながってくる言葉。人間は日々成長する生き物。成長が止まったときが、”人”としての後退の時期なのかと思います。どんなに小さなことでも、どんなに小さな一歩でも、謙虚に学ぶ姿勢がいつも必要。そういうことを理解できる集団こそ、強いものはないということでしょう。

折しも、WBCの合宿が始まりました。この本では2009年の前回大会直前に書かれており、当時も少しすったもんだで最終的に原監督に決まったことにノムさんのボヤキがあります(笑)。そのボヤキを跳ね返して、前回は連覇を達成した侍ジャパン。今回は果たしてどうなるのでしょうか。。

2月 11

最近、Kindleに絡んで、KDP(キンドルダイレクト・パブリッシング)というのが話題になっている。これは個人が書籍を書き、Amazonを通じて、電子書籍という形でデジタルパブリッシングできるサービスだ。作家や作家志望の人だけでなく、ブロガーや素人の出版物も多く、玉石混交としているが、ブログやTwitterという形以外での情報発信の形が1つできたというのでは意味あるサービスだと思う。無論、出版社を通していないので、気軽に出版できるが、読者から見れば、特にノン・フィクションや教科書的な出版物だと編集や校正という作業が入っていないので、書かれている情報には注意する必要があるのは言うまでもないが。。

でも、ブログだとまとまりがなく、流れてしまうような情報でも、書籍という形でまとまっていると読む側もとっても読みやすい。ここで最近、オススメなのが本著「3万円の望遠鏡とデジカメで楽しむ 気まぐれ天体撮影ガイド2013」だ。僕は小さい頃、冬限定の天文少年(夏は田舎なので、虫がいっぱい出て嫌なのでw)だった。爺ちゃんの遺品だった双眼鏡や、婆ちゃんに買ってもらった望遠鏡を使って、冬の星空をよく眺めていた。中学、高校と上がる中で、いつしかそんな子どもの頃に熱中していたことも冷めてしまったが、この本を読んで、また始めたいっと素直に思えた。

マニアな人なら天文ガイドなどの雑誌を買って、◯◯星雲だの、△△彗星だの、、望遠鏡を買うなら、これくらいのスペックでとか、、カメラはこの口径でとか、、訳も分からず、何か高い機材を揃えないとできないのかと思いがち。そんな敷居の高さで、星空を見る前に敬遠してしまう人も多いだろう。この本は3万円台のお得で、基本機能をカバーできる望遠鏡と、おそらく大抵の人が持っているであろうデジカメスペックで楽しめるところを解説しているのが、気軽に始めたいと思う人にはすごく有難い。あと、それこそどこの星だか分からない天文ショーではなく、素人でも分かり、なおかつ見栄えのする2013年の天文ガイドも載せてあるのが嬉しい。かつページ数も40ページ弱と短いのもいい。さらっと読めて、まず何から始めればいいのかが分かる。それが入門書には必要な要素なのだ。

なお、この本はKindle paperwhiteではなく、iPadなどのタブレット端末で読むことをオススメしたい。筆者が撮影したカラーカメラ画像や動画映像のYou tubeリンクがあり、それらを気軽に参照できる端末で見て欲しいのだ。この本を使って、日曜天文家に今年はなってみたい。

関連リンク: 【KDP最前線】これであなたも日曜天文家「3万円の望遠鏡とデジカメで楽しむ 気まぐれ天体撮影ガイド2013」を執筆した”松永 安浩”さんにインタビュー | きんどるどうでしょう

2月 10

今回は珍しくコミック本の紹介。漫画も読まないわけではないけど、なんせ読むスピードが早いのであんま記憶に残らないんですよね。でも、これは面白かった。

主人公は現代から戦国時代にタイムスリップしたシェフのケン。この辺りはテレビで大ヒットした「JIN 仁」に設定が似てなくもないですが、あちらは医者で幕末が舞台だったのに対し、こちらは料理人で戦国時代。戦乱の世で、人がいつ死ぬかという時代に、凄腕のシェフがタイムスリップするという設定だけでも奇想天外です。

でも、逆にそれがいいんですよね。死がいつも隣り合わせだった時代だったからこそ、人の心を動かすのが”食”であるというのが物語の根底にあり、これにすごく共感するのです。前に会社の研修で、人と食事をするということは、その人に対して胸筋を開くという行為をすることと同じと聞いたことがあります。衣・食・住という生活に関わる、もっともプライベートな事項でありながら、もっとも疎かにしやすいのが”食”でもある。でも、その”食”で人の心を動かしたり、癒したりという効果があることが、物語を進めていく重要な起爆剤になっているのです。

それに戦国史好きにも嬉しいキャラクターや、重要なトピックにうまく物語が絡んでいることもいい。ケンの初陣が、信長の生涯の戦いの中ではいささかマイナーな伊勢侵攻の北畠家との戦いというのがすごくマニアック。。この後に朝倉・浅井の連合軍との戦い(金ケ崎の逃亡劇、姉川の戦い)や本願寺との戦いも絡んでくるというのは、、、考えるだけでもワクワクしてきます。

実は、このコミックを原作としたドラマ版もテレビ朝日で絶賛放送中です(TV版「信長のシェフ」)。いささかケンの役どころが少し若い気もしないでもないですが、周りを固めるキャスト陣が豪華なのでこちらも必見でしょう。

preload preload preload