12月 20

GAMBA

「GAMBA ガンバと仲間たち」を観ました。

評価:★★

3D版にて。

斎藤惇夫の児童文学『冒険者たち ガンバと15ひきの仲間』を元に、「ALWAYS 三丁目の夕日」の脚本家・古沢良太と、「friends もののけ島のナキ」などの製作で知られる白組がタッグを組んだ3DCGアニメーション。30〜40代くらいのちょうどお父さん・お母さん世代では原作文学よりも、1975年にTV放映され、後の1984年には劇場版も公開されたアニメ作品「ガンバの冒険」のほうを記憶されている方も多いんじゃないでしょうか。僕も幼稚園くらいに劇場版を見た記憶が何となくあって、大きなスクリーンに描かれたノロイは強烈なまでの恐ろしさを感じたことを覚えています(これは一種トラウマかも笑)。昔のアニメ版は多くのネズミたちが登場してはノロイやその手下たちに殺されていったような記憶しかないのですが、確かに命を落とすネズミたちは多いものの、いろいろ調べてみるとそんなに数は多くないようです。いい意味でも、トラウマという悪い意味でも、冒険のいろいろな側面を教えてもらった原作を、白組がどのような形で現代アニメにしたのか少し楽しみでした。

最初、ぱっとポスターを見た時から、ネズミたちの造形は少女漫画っぽく可愛く映っているし、敵となるノロイらイタチ以外は、全てディズニーアニメにも登場しそうな穏やかなキャラクターをしているのに少し違和感を感じました。3Dということもあり、冒頭の港町のシーンから奥行きをうまく活用して、アクションに幅をもたせているものの、「ガンバの冒険」で感じたような冒険の厳しさというのがどことなく感じない。ガンバも未知なる世界へと足を踏み出しているし、果敢にも島を抜けだして助けを求めに来た忠太の姿に応える男気を見せるところも熱いシーンではあるのですが、この造形の柔らかさが厳しい冒険劇というのからトーンを一段も二段も落としてしまうところが残念なところなのです。同じような冒険活劇で見ると、例えば、「ロード・オブ・ザ・リング」などは敵となるサウロンにしろ、ゴブリンにしろ造形はすごく醜く、そこへ乗り込んでいくホビットにしろ、ドワーフにしろ、土臭いキャラクターにしているからこそ、冒険劇としての厳しさを感じるもの。本作では物語としては、冒険の厳しさを教えるところは随所にあるし、「ガンバの冒険」と同じように味方のキャラクターが戦いの上に死んでいくような悲しい場面もあるのですが、決してそれで血や肉踊るようなことはないし、心の底から感じるような苦しいまでの悲しさというものが伝わってこない。すごくマイルドな風合いの作品に仕上がっているのです。

「friends もののけ島のナキ」では原作のもつ物語の哀しさを、3Dの造形を逆に利用して奥行きをつけた秀作でしたが、本作は物語の熱い部分を、映画の造形が全て(悪い意味で)柔らかくしてしまったように思います。それは小さい子でも見れるような配慮なのかもしれないですが、それでは僕が小さいときに観た「ガンバの冒険」で焼き付けられた印象の半分も伝わってこないように思います。どちらがいい・悪いの問題ではないのですが、これが今の世代の”ガンバ”に込められたメッセージ性だと感じると、少し残念な印象も拭いきれません。本作が柔い(やわい)と思った親御さんは、是非昔の「ガンバの冒険」をお子さんに見せて上げてください(しばらく寝られなくなっても保証はしませんが、、笑)

次回レビュー予定は、「コードネームUNCLE」です。

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