11月 11

グローリー 明日への行進

「グローリー 明日への行進」を観ました。

評価:★★★

黒人の地位向上に尽力し、1964年にノーベル平和賞を受賞したマーティン・ルーサー・キングJr牧師。彼がノーベル平和賞受賞直後の1965年に起きた「血の日曜日」と呼ばれる、黒人公民権運動の顛末を描いた作品。日本の歴史教育の中で、近現代というのは直近ではあるものの、もっとも学ばれていない現実がある昨今、キング牧師といえば黒人たちの地位向上(公民権運動)の指導者、有名な「I have a dream」に象徴されるワシントン行進、そして暗殺事件というところが僕自身も知りゆる全ての範囲。そこで、この1965年にアラバマ州セルマで起きた事件(「血の日曜日」事件と呼ばれていますが、負傷者はたくさん出たものの、死者は実質1人)は日本人の中でも印象がかなりない出来事ではないかと観ていて思いました。

黒人たちの公民権運動や地位向上を目指した1960年代前後を扱った映画は、過去にもたくさんあります。思いつくところの近作では、一人の白人ライターが虐げれる黒人メイドの地位向上に動いた「ヘルプ ~心がつなぐストーリー~」や、人種差別をはねのけ黒人初の大リーガーとなったジャッキーロビンソンを描いた「42 ~世界を変えた男~」、34年の任期の中で大統領とともに時代の趨勢を見続けた黒人執事をとり上げた「大統領の執事の涙」など、近年でも多くの作品が時代を越え、様々なテーマで描かれ続けています。人種のるつぼであるアメリカでは黒人だけではなく、中南米系、アジア系、アラブ系と多くの人たちが住んでいるにも関わらず、これだけ黒人の地位向上のテーマにした作品が作り続けられるのは、民主主義を国是として掲げる国において、これら公民権運動が、それだけエポックメイキングな出来事であり、それを何世代にも渡り伝え続けなければならないという、国としての意思みたいなものが感じられます。

しかし、他方でアメリカから遠く離れて暮らしている私たちにとって、この全てのことが共感できるとは限らない。作品としての完成度は高いものの、イマイチ内容に共感できないのはそういうところにあるのかなと思います。毎日の暮らしの中で虐げられる黒人たち、公民権運動の盛り上がりを見せるデモ隊、それを遮る白人警官、デモ隊のコントロールに悩み、自らの政治的な地位との画策を狙うキング牧師像など、一市民と政治家がどのような関わりの中で国の動きを作っていく活動を見せていったかの軌跡を知ることができるのは非常に有益だとは思うのですが。。単純な感動につながらないのは、アメリカ国民でない私たちが見ているからかもしれません。

次回レビュー予定は、「サヨナラの代わりに」です。

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