11月 20

わたしに会うまでの1600キロ

「わたしに会うまでの1600キロ」を観ました。

評価:★★★

アメリカ西海岸を縦断するような形で存在する自然道”パシフィック・クレスト・トレイル”。この道を3ヶ月かけて縦断したシェリル・クレイドの自叙伝を元にしているのが本作。主演のシェリルを演じるのは、「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」のリース・ウィザースプーン。トレイルを歩くきっかけとなった幻影の母親を演じるのは、「ジュラシック・パーク」のローラ・ダーン。ちなみに、この二人は本作でアカデミー主演女優と、助演女優のそれぞれ候補になりました。監督は、「ダラス・バイヤーズクラブ」のジャン=マルク・ヴァレが務めています。

つい先日、「奇跡の2000マイル」の感想文をUPしたばかりなのですが、本作も「奇跡〜」と同様に女性が1人長い距離を歩いていくというお話。でも、「奇跡〜」の主人公ロビンがどんな自然や文化にも負けることないサバイバーな女性なのに対し、本作のシェリルという女性は、歩くことに関しては本当に素人のような感じがします。走破距離が1600キロと2000マイルと半分以下というのもそうですが、冒頭からハイカーとしては余分な荷物を持ちすぎで、合わない靴で苦労するなど、素人感は丸出し。しかし、そんな素人の彼女が、なぜこうした過酷な旅に出ようと思ったのかという真意の部分は、「奇跡〜」のロビンよりは私たちに身近な問題であることが見続けていると理解できてくるのです。

人は生きているといろんな人とコミュニケーションを図るわけですが、そうして生きている中でも自分の想いというのを正直に伝えることはなかなかできないもの。たとえ、それを言葉や行動という形で表せたとしても、本当に自分の伝えたいことではなかったり、あるいは気持ちとは逆のことを吐露してしまったりなど、、、後々残るのは後悔ばかり。人にとって、旅とはそうした自分の中のもやもやとした想いを、様々な場所で叫び、思い返して解消していく手段にもなります。主人公シェリルが、パシフィック・クレスト・トレイルの旅で吐き出したかったのは母親への想い。いつも愛し、手を差し伸べてくれた母、人間らしく悩み、もがき苦しんでいた母、そうした母親の愛情を、自分は真正面に受け取れなかったことへの後悔。何をしてもうまくいかない自分との決別も含め、彼女はこの旅を通し、自らの身を清めるように歩き続けていく。旅が、どこまでも続く道が答えを出してくれるわけでは決してないけど、この旅の時間が彼女を癒やし、成長させていることは観ていてもよく分かります。

「奇跡〜」の感想文でも書きましたが、こうした過酷とも思える旅に行く意義は未だに自分自身は理解できないまでも、自分を見返すこと、自分自身への対話への時間というのは人が成長していく中でも必要な瞬間だというのはよく理解できます。自分も日常の中で、他者から見れば無とも思える時間こそ、自分にとってはかけがえのない一時だったりするのです。あなた自身も、自分との旅へ出かけてみたくなる一作です。

次回レビュー予定は、「PAN ネバーランド夢の始まり」です。

11月 19

五つ星ツーリスト THE MOVIE

「五つ星ツーリスト THE MOVIE 究極の京都旅、ご案内します!!」を観ました。

評価:★★

京都の旅行会社を舞台に、ハミダシ者社員が押し込まれた”中央管理センター”の人間たちが、最高の京都旅をプロデュースしていく同名ドラマの映画版。もともとは深夜ドラマの枠で放映されていたもので、ドラマの定番ストーリーの流れとしては、クレーマーやワケありの旅行客がいる京都ツアーを山本裕典演じる新人ツーリストの佐竹一郎が上司から無理やり押し付けられ、アタフタしている中で元カリスマツーリストで、今や”中央管理センター”という窓際に追い込まれている、渡辺直美演じる高瀬京香が腕を振るって助けていくという構成が一般的なドラマになっていました。今回はドラマの大ヒットを受け、映画版として展開しているわけですが、佐竹はドラマ版の最後で結局”中央管理センター”異動となる毎日の中で、新進気鋭のアメリカ人ドキュメンタリー監督の取材を受けるといった中身になっています。

僕が本作が好きなのは、やっぱり京都が舞台ということ。学生の頃から、いろんな街に住んできましたが、いつも京都が一番と感じるのは、やはり街中の至るところで日本の文化を感じるところでしょうか。それは何しも社(やしろ)や寺院といった宗教を中心としたものだけではなく、例えば、映画や音楽、喫茶店やカフェなどの現代文化を通じても、古くは1200年前の平安の世から江戸、幕末・明治維新から現代まで全ての文化が街中で形となって現れている。学生のときに住んだ金沢でも、それは同じなのですが、文化密度が圧倒的に違うし、東京や大阪などの都市圏に比べると、やはり古(いにしえ)から受け継がれた伝統美というものが備わっている(東京は近現代から発展した都として、多少同じような空気も感じますが)。ここが今でも多くの観光客を惹きつける、京都ならではの魅力だと思います。

ドラマ版ではお話そのものも面白いのですが、併せて京都の魅力というのが、本当に観光をしているような形で紹介されるのが何よりも楽しみでした。京都に住んでいた頃(といっても、最近もちょくちょく行っていますが)の思い出や、街の空気感みたいなものも含め、画面から伝わってくるのが本当に楽しい。ですが、本映画版は上記したドキュメンタリー監督が撮っている、ドキュメンタリー映画の絵が本編の映像となっているので、ドラマのように単純に楽しむには不釣り合いな作風になっていると感じます。お話自体も安っぽいのは元が深夜ドラマだから仕方がないとしても、もっと映画版ならではの味わいというのを感じたいのが正直なところ。これからドラマの最終回の盛り上がりのほうが圧倒的に上だっただけに、本作の出来はファンとしても残念なところです。

次回レビュー予定は、「わたしに会うまでの1600キロ」です。

11月 17

ラブ&マーシー

「ラブ&マーシー 終わらないメロディー」を観ました。

評価:★★☆

1960年代を代表するロックバンド、ビーチボーイズ。その中心的な存在でもあるブライアン・ウィルソンの半生を、彼らがヒットした1960年代と、1980年代の2つの時代をまたいで描く意欲作。1960年代の大ヒット絶頂期にあるウィルソンを演じるのは、「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」のポール・ダノ、1980年代の落ちぶれた時期を演じるのは、「ハイ・フィデリティ」のジョン・キューザック。監督は、「それでも夜は明ける」などで製作を務めたビル・ボーラッドが初監督として担当しています。

日本で夏のバンドといえばTUBEでしょうが、洋楽でと言われたら、未だにビーチボーイズではないでしょうか。僕も夏の時期の車で聞く洋楽コレクションでは、ビーチボーイズの「California Girl」や「Kokomo」、「Fun,Fun,Fun」などのナンバーは手放せません。でも、ビートルズと違って、ビーチボーイズのヒットした時期というのは1960年代の限定した時期といった印象。大ヒットナンバーを生み出したブライアンが、なぜビーチボーイズの前面に出てこなくなったのかとか、ファンなら知っていることを一般周知してくれる意味でも本作は意義があるのかなと思います。

映画もビーチボーイズの名曲には彩られているものの、1980年の現代を生きるウィルソンの苦悩を、1960年代のいろいろな出来事にフラッシュバックして描く手法はいささか切れ味のなさを感じてしまいます。それも、ジョン・キューザック演じるウィルソンが抱える現時点(1980年代時点)の物語があまりに重苦しいものになっていて、過去のビーチボーイズの威光みたいなものに影を指すものになっていること。過去は過去、現代は現代と割りきった描き方をすればテンポも出るのでしょうが、本作に関しては、この現代の物語がすごく足かせになっているように思えてなりません。

それでも1960年代の空気感を、まるでそのときのような情景で描く手法はなかなか見応えがあります。音楽も最高なので、夏の時期に見る作品としては十分に及第点はクリアしていると思います。

次回レビュー予定は、「五つ星ツーリスト THE MOVIE」です。

11月 16

俺物語!!

「俺物語!!」を観ました。

評価:★★★★☆

作画:アルコ×原作:河原和音による同名少女漫画を「映画 鈴木先生」の河合勇人監督が映画化した作品。主演の豪傑男・剛田猛男を演じるのは、「HK 変態仮面」でもキワモノになる変態仮面を体現し、本作の猛男役を演じるのに30kgの増量をしたという鈴木亮平。ヒロインの大和凛子役を永野芽郁、猛男の親友・砂川誠を坂口健太郎が演じています。

僕は原作をタイトルくらいしか知らないのですが、予告編を見ても、ある程度の想像がつくように典型的なミス・コミュニケーションによる誤解が元で、話が展開していくという構成。その根底にあるのが、誰しも1回は持ったであろう、「どうせ、僕なんか〇〇だから」という自己否定の感情だ。僕は自分自身の障害を持っていることもあって、痛いほど、この気持ちがよく分かる。小さい頃、友だちと遊ぶときにも特別扱い。それは優しさとは分かっているのだけど、自分が決して友だちの輪の中心には入っていけないだろうし、話題の中心になるかこともない。「どうせ、僕なんか、、」という感情に苛まれていた。これは恥ずかしいながら、大人になった今でも抜け切ることはできない。仕事でも、プライベートでも、自分はどうせ相手の眼中には入っていけない。だから、そこでコミュニケーションが終了してしまい、高い壁を自分でも作ってしまう。それを自分でも打ち壊したいし、打ち壊して入ってくる人(意図しない破壊工作をされるのは心外だが、、、笑)をどこか求めているのだ。

本作の主人公・猛男も、図体がでかく、力持ち、おまけに人に対して優しくて、関わった人は全て心が温かい気持ちになる。しかし、熊みたいな風貌で、女性には決して振り向いてもらえず、慕ってくるのはいつも男ばかりだった。そんなある日、街中で不良に絡まれている女子高校生の凛子を助ける。凛子はその猛男の行動に一発で虜になるが、猛男自身は幼なじみで美男子の砂川と凛子が会話しているところを目撃したことから、凛子は砂川に恋心を抱いていると誤解していくことになる。。

話の設定的には、こうした誤解を元に展開していくというのはよくあるものですが、クマ男・猛男という強烈なキャラクターが典型的な展開をより面白いものに仕上げています。そして何よりいいのが、猛男を囲む周りの人物たち。特に、ヒロインの凛子を今の日本ではまずいないであろう、大和撫子(やまとなでしこ)的な優しさ満載のキャラに仕立てたことがいいんです。ヒロイン役の永野芽郁も、彼女の代表作になるだろうと思うくらいの名演を見せています。猛男の家族、そして何を考えているかわからない親友・砂川(坂口健太郎もいい味を出しています)も、猛男の想いをしっかりと支えるキャラクターとして、作品の中で輝いています。これは実にいい。

原作は未読なので分からないのですが、大ヒットコミックとして、しっかり立脚したものだろうと思います。とかく映画作品となると崩れてしまうものも多い中、本作はお話として面白い要素はそのままに、映画としても大事なテーマをうまく織り込んでいる秀作だと思います。コミック原作作品だと侮ることなかれ、映画ファンにも観てもらいたい一作です。

次回レビュー予定は、「ラブ&マーシー」です。

11月 15

奇跡の2000マイル

「奇跡の2000マイル」を観ました。

評価:★★★☆

ラクダ4頭と愛犬を連れ、オーストラリア西部に広がる砂漠2000マイル(約3000キロ)を横断した女性ロビン・デヴィッドソンの実話を描いた作品。監督は「ストーン」のジョン・カラン。主演のロビンを演じるのは、「アリス・イン・ワンダーランド」や「嗤う分身」などで印象的な演技を魅せているミア・ワシコウスカが務めています。

ちょうど同じ時期に「わたしに会うまで1600キロ」(感想文はまだ、、)という同じような女性が長距離を歩き切る作品を見せているだけにこんがらがりそうですが、こちらはより過酷なオーストラリアの砂漠地帯を横断した一人の女性の実話。よく登山でもそうですが、こうした大陸横断や砂漠縦断などの目的というのは、個人的には共感できないのが正直なところ。まだ、日本で言うと、四国のお遍路さんのような聖地巡礼の旅や、日本横断・自転車旅行などは、純粋に人に出会ったり、修行の目的で神と自分と見つめ合ったりという目的がありそうではあるのですが、こうした自分を痛めつけながら、壮大な目標に挑戦していくというのは何とも無謀であるなーと個人的には思ってしまうのです。

でも、この映画の主人公ロビンは、本当に何かの強い意志に動かされて、孤独な未知なる旅へと出発していきます。そうした姿には孤高のヒロインというのにふさわしいカッコよさ、凛々しさみたいなものがスクリーンからジンジンと伝わってくるのです。その他は映像が一環として砂漠の土色に染められている。画面を通して、すごく乾いた砂風や埃っぽさがこちらに迫ってきて、映画終了時にはロビンと同じような道のりを走破したような、何とも心地よい疲労感を感じることができます。これは何とも不思議な体験ができる映画となっています。

観ていて驚くのは、オーストラリアの乾いた大地の中でも逞しく、慎ましく生きる人達がいるということ。もちろん、映画なのでドラマの中ではフィクションなのですが、原住民アボリジニだけではなく、田舎というには日本とは比することもできない過酷な土地で暮らす人々が(モデルとして)いることに驚きを感じました。

映画のテーマみたいなところには、あまり共感はできるところはないのですが、主人公の目線で旅をできることができる作品となっています。

次回レビュー予定は、「俺物語!!」です。

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