9月 07

イニシエーション・ラブ

「イニシエーション・ラブ」を観ました。

評価:★★★

映画公開当初から、ラスト5分で全てが覆る、、という宣伝文句で煽っていたラブ・トリックムービー。原作は、同じくこのラストネタで130万部を売り上げた乾くるみの同名小説。「SPEC」の堤幸彦監督がメガホンを取った作品になっています。この手の、「ラストですべてが、、、」という宣伝文句を謳う作品というのは、そうでなく何も宣伝しない系(「ユージュアル・サスペクツ」や「シックス・センス」など)に比べて、観る側が身構えてしまう分だけうまくトリックが決まらないことが多いのですが、この作品は結構頑張っていると思います。それも主演の松田翔太、そして前田敦子のカメレオンぶりに尽きるといったところでしょうか。それでも、原作を読んでいない僕は、観てすぐ分かっちゃいましたけどね。

あまり、このラストのトリックについて書くと面白みが減ってしまう(というか、作品的にゼロになる??)ので、ネタバレは避けますが、とはいいつつも、この映画はこのラストがないことにはそもそも成立しないように思います。だから、このラストがあるという設定で考えると、このラストに持っていくまでに結構緻密にプロットを重ねていると思います。大きくは、静岡で出会った奥手な大学生と歯科助手の不器用な恋を描いた第一幕と、遠距離恋愛となって関係が薄れていく第二幕があって、作品的に、この二幕構成をスムーズにつなげることが肝なんですが、一幕単位での描かれ方も緻密だからこそ、全てのネタがばれたときにあっさり感というか、トリックによって物語が薄っぺらくなることがない。得てして、この手の映画はトリックばかりにこだわりすぎて、それ以外のことがおざなりになってしまうことが多いのですが、本作に関しては、ちゃんと各エピソードがしっかり組み上がるからこそ、トリックがちゃんと成立しているという形がしっかりしているように思います。

ネタ的には、観客の誤認識を誘う典型的なミスディレクションな形になっています。こうした形の作品は、その観客の誤認識を分からないように如何に包み隠してしまえるかがキーポイントですが、本作は映像的にはよく見れば違いが分かるのに、観客がミスリードしてしまう(ん、ネタバレですかね笑)ところが、とても映像映えというか、映画向きな作品になっているように思います。ネタが最初から分かってしまった人も、そうでない人も、ラストがどう転がるのか見逃さずにはいられないドキドキ感を最後まで引っ張ってくれるところも、エンタテイメント向けというところではよくできた作品になっていると思います。

次回レビュー予定は、「しあわせへのまわり道」です。

9月 02

テッド2

「テッド2」を観ました。

評価:★★★☆

字幕版にて。

見た目は可愛いが、中身は中年のオッサンというテディ・ベア、テッドが帰ってきた。前作は話題にはなったけど、それほどヒットした覚えはない感じがしましたが、巷での”テッド”というキャラクターがどうも人気先行しているような感があります。毒を吐くといっても、見た目は可愛いテディ・ベア。ゲーセンのUFOキャッチャーや、関連キャラクター商品も、子どもや若い人たちに人気がありますが、映画作品は今回もあくまで「R-15」指定。僕が観ようと思っていた回にも小さい子どもを連れてチケットを買おうとしたお母さんがいましたが、日本語吹替え版でも、15歳未満は入場ができませんのでご注意を(そのお母さんも、子ども連れで入場券は発行されませんでした)。

前作はテッドが、マーク・ウォルバーグ演じるジョンとの出会いから、その関係性を描くところでちょっともたついた感があって、全体的にリズム感がイマイチな作品でした。しかし、今作はそういう前置きは不要なので、序盤から一気に飛ばしている感があります。作品のテンポもとっても軽妙だし、台詞の1つ1つの掛け合いも爆笑もの。ただし、注意していただきたいのは、前作から面白さは2倍になりましたが、卑猥度はそれ以上の4倍増しくらいになっているので、「R-15」指定も納得の出来栄えになっています(笑。再度、ご注意しますが、いくらテッドが可愛いといっても、ペニス型の吸入器やら、お尻丸出し描写やら、果てまた精子のひっかけあいなど、超卑猥描写と台詞のオンパレードに耐えられる方の鑑賞をオススメします。。この出来だと、デートムービーにもふさわしくないかも、、です(笑)。

それでも、そうしたことを十二分に許容できるのであれば、本作は前作以上にパワフルな形になっていると思います。テッドは、前作のスーパーで出会ったタミ・リンとの仲が続いていて、遂に彼女と結婚するし、”フラッシュ・ゴードン”本人こと、サム・ジョーンズは本作でも爆走モードで元気。ガイはまた新しい男をつくって、本作のラストで大暴れなど、楽しいシーンが満載です。前作の絡みでいうと、ジョンの恋人だったローリーが、ジョンとは破局したという設定で出てこないのが残念ですが、その代わりに弁護士で出てくるサマンサもぶっ飛んでいてキュート。モーガン・フリーマンなどクレジットされている名優だけでなく、カメオ出演で大物スターがザクザクと出てくるのも驚くところ。ただ、カメオ出演している俳優の出演作を見ないと分からないネタ(スーパーのレジに登場するあの人とか、コミケで出てくるあの人とか、、)も多いので、この辺りは映画マニアへのご推奨といったところでしょうか。。(笑)

さて、テッド2が出てきたので、これは3もあるでしょう。次回も超爆走(&超爆笑)モードで頑張って欲しいところです。

次回レビュー予定は、「イニシエーション・ラブ」です。

9月 01

鏡の中の笑顔たち

「鏡の中の笑顔たち」を観ました。

評価:★★★★☆

先日「種まく旅人 くにうみの郷」の映画感想文で、農業映画というのは割と鉄板映画(どんな作品でも一定の面白さがある)ということを書きましたが、理容室や美容室をテーマにした、”バーバー映画”も意外にハズレは少ないです。近作では池脇千鶴主演の「はさみ hasami」も面白かったし、海外に目を向けても、「胡同の理髪師」、「バーバー」、「髪結いの亭主」など、”バーバー映画”は面白い作品が多いです。理容や美容というのは、髪という人間の見た目を最も大きく左右するものを扱いますし、髪型1つで気分転換になるように、人生を大きく左右もしてくるので、とても映画向きな素材なのかもしれません。それにメイクもそうですが、髪を整える理容というのは実際に人と人とが触れ合いながら、形づくっていくものなので、そこで起こる物語というのも、とても人間味が溢れてくる作品が多いようにも感じます。

本作は、そうした美容業界で一躍カリスマにものぼりつめた一人の青年理容師・井上が、逆にそのカリスマというポジションだからこそ起こしてしまった人気モデルとのいざこざで、業界トップから陥落し、地方の名もない美容店での訪問美容から再生を図っていくというお話。こうあらすじを一言で書いてしまえるくらい、とってもシンプルで、予告編以上に驚きは正直ない作品です。かといって、つまらないかというと実は全然そうでもない。むしろ、こうしたすごく真っ直ぐな作り方が観ていて、すごく気持ちいい作品でした。都会の中で、”美”を追求し、それによって彩られ、ファッション界のトップを行くような女性たち。まるで義務感のように美を追求する彼女らに対し、井上が訪問美容で出会う年配の女性たちは、誰に見せるとかではなく、自分の生活をあくまで自分らしく”美”をもって生きたいと思っている。たとえ、ボケて頭が回らなくても、その美しさを見せる身寄りがいなくても、彼女たちが美しくなることで、毎日の生活に張りが出る。自分の美容術にこだわり続けてきた井上も、そうした違った価値観に、徐々に本当の美容師としての生き方に目覚めていくのです。

僕は井上を見ていて、分野は違えども、若い頃の自分の考え方によく似ているなと思いました。学生のときも、社会人になった頃もそうでしたが、とかく自分の腕や能力というところにこだわりすぎて、その学んだことや経験したことを周りに全然還元しようとはしなかった。それはともすれば、自分さえよければいいという独善的な考えにもたどり着いてしまいます。僕は能力というのは全然高くないので何ですが、主人公・井上のように素晴らしい腕前(技術)があったとしても、それを例えば仕事の中でどう活かすかというのは全く別問題。いいエンジンをもっていても、それだけでは車は動かないように、お客さんがいて、同僚や仲間がいて、その中で初めて自分というものが輝いていく。それは家族でも、会社でも、社会の中でも同じことなんだなということを、最近になってよく感じます。札幌の美しい風景の中、そうした井上の純なまでの成長が、見ていて非常に清く素晴らしく映った作品でした。

次回レビュー予定は、「テッド2」です。

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