8月 24

ピッチパーフェクト

「ピッチ・パーフェクト」を観ました。

評価:★★

日本でも一時期(2000年?)人気になったアカペラコーラス。本作は、音楽好きな一人の女子高生が大学に入学とともに、少し落ち目のアカペラ部に入部していくお話となっています。主演は、ミュージカル映画「イントゥ・ザ・ウッズ」でも美声を披露し、ハリウッドでも人気急上昇中の女優アナ・ケンドリック。監督は、TV界で活躍の場をつくってきたきたジェイソン・ムーアが手掛けています。

2012年公開のミュージカル映画「レ・ミゼラブル」のヒットにも分かるように、日本にもミュージカル映画を楽しむ層というのが一定の割合でいます(昨年の「アナ雪」もミュージカルアニメですけど、ヒットの仕方は少し特殊)。という僕も、「ヘアスプレー」や「雨に唄えば」などのミュージカル作品も大好き。でも、結構好き嫌いもはっきりしていて、「シカゴ」や「NINE」のロブ・マーシャル監督とは相性が悪いし、「イントゥ・ザ・ウッズ」や「レ・ミゼラブル」のような全編が歌というのも少し飽き飽きしてきます(ミュージカル好きな人、スイマセン)。それでも音楽は好きなので、「セッション」や昨年の「ジャージー・ボーイズ」のような、劇映画なんだけど、音楽が超絶モノという作品のほうがむしろしっくりくるように思います。

という意味で、僕が本作に求めたのは、あくまで音楽という要素を中心とした作品作り。もちろん、コーラスの部分は最高だし、最後のコンテスト部分もすごい盛り上がりに興奮してきます。ただ、その他の劇映画としての部分がいささかお粗末すぎるかと思います。主軸となるのは、アナ・ケンドリック演じる主人公ベッカが、大学でのキャンパスライフを歌と共に送っていくというお話。でも、基本の組み立てが結構お下劣度も高いキャンパス・コメディに仕立てられていて、それにアナの美しさというのがいびつな形で際立ってくるのです。サブ・キャラクターとなる他の学生たちは、個性は強くていいのですが、お下劣度に走りすぎると、肝心の美しいコーラスもうまく引き立たない。「ハイスクール・ミュージカル」や、日本でもヒットした「Glee/グリー」のような上手い形のキャンパスドラマに、なぜならないのか不思議で仕方ありません。

それに本作、実はアメリカでの公開は2012年。続編となる「ピッチ・パーフェクト2」と併せた日本での興業のために、第一作が今年緊急公開されたという感じになっています。続編は2015年秋公開。今度は世界コンクール、、、だそうですけど、この内容だと見るかどうかは正直微妙です。

次回レビュー予定は、「ジュラシック・ワールド」です。

8月 23

ミッションインポッシブル ローグネーション

「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」を観ました。

評価:★★★☆

1996年に公開された「ミッション:インポッシブル」から、本作で早くも20年近くが経とうとしています。息の長いシリーズになった本作は第5弾。96年公開の第1作目こそ、元ネタとなった往年のTVシリーズ「スパイ大作戦」と同じく、チームでミッションを遂行するというイメージの作品でしたが、2000年公開となった第2作目からは主役のトム・クルーズのアクションというのが抜きんでた、それこそ夏に見るのにふさわしい大作アクションとなっていった感があります。僕自身は、トムが主役級になってしまった2作目というのは、アクション映画としても大味になってしまって、ガッカリしたんですが、妻との家族愛(パートナー愛)を見せた3作目で、IMFの裏方も含めてドラマを作ったところで軌道修正し、その妻とのその後の関係をミステリーにしてしまった前作「ミッション:インポッシブル ゴールド・プロトコル」はストーリーとしても味わい深い作品になったと思います。チームで動くというところも、徐々に軌道修正させて1作目に近い形となってきた本シリーズですが、本作ではアクションシーンにより磨きをかけて、それこそ夏休みに暑さを振り払うにはスカッとした快作になったと思います。

本作は、前作で崩壊寸前まで追い込まれたIMFが、組織として解体の憂き目にあうというギリギリのところからスタートします。しかし、そんな解体劇の裏に暗躍していたのは、CIAやKGBも実体を掴めないでいる謎の”シンジケート”の存在。後ろ盾のなくなったハントたちは、自らの危険も顧みず、その巨大な組織”シンジケート”の実体を暴くため、チームを組んで立ち向かっていきます。

前作ではクレムリンを破壊し、ラストでは高級車を何台もつぶす、激しい駐車場アクション(笑)を魅せてくれましたが、本作の満腹度はそれ以上。予告編でもある冒頭の輸送機を追いかけるアクションに始まり、激しい水流の中にある頑強な金庫システムへの侵入や、美しいモロッコの背景を舞台に行われるカースタントとバイクアクションの数々、、、御年53歳となるトムが、本当に年齢を感じさせない艶のあるアクションシーンをいとも簡単にやってのけるのが、これまたすごい。軍用機やバイクのシーンなんて、CGに頼ることなく、しかもスタントマンにも頼ることなく、ほぼ自力で迫力あるシーンを描き出していきます。

作品を観ていて、僕はこのシリーズは”007シリーズ”の対となるような作品にしたいんだろうなーということを至るところに感じます。冒頭がアクションから始まるのもそうだし、IMFとMi-6が対になっているのも然り、IMF長官やQなど組織にはキーマンとなる人物がいて、ボンドガールならぬ、各作品には味のある女優をスパイチーム、もしくはキーマンとなる女性(まさに、この配役の仕方がボンドガール的なんですけど笑)に置く。そして、どちらもアクションが凄い。007はジェームズ・ボンドが孤高のスパイとして動きますが、ハントもチームは組んでいるものの、トム・クルーズという主役級キャラがとても立ったお話になっている。ちょうど、今冬には007の新作「007 スペクター」が公開になりますが、夏には「ミッション:インポッシブル」、冬には「007」と交互に見分けることができるように製作してもらえると、映画ファンとしては嬉しんですけどね。

次回レビュー予定は、「ピッチ・パーフェクト」です。

8月 19

種まく旅人 くにうみの郷

「種まく旅人 くにうみの郷」を観ました。

評価:★★★

2011年に田中麗奈、陣内孝則主演で、大分県臼杵市を舞台に、茶畑に挑んでいく一人の女性を描いた「種まく旅人 みのりの茶」。本作は、その”種まく旅人”シリーズの第二弾作品(ちなみに、この後も第三弾が控えています笑)。僕は、このシリーズはコミックか何かの原作かと思っていましたが、何も関係ない第一次産業支援ムービーなのだとか(後援にも、大きく農林水産省の文字が。。)。そういった金銭的な背景は別にして、前作も陣内孝則演じる奇抜な農水省官僚・大宮金次郎がいい味を出していたので、彼を主役級にしてシリーズ作を構成してもよかったかなとも思いましたが、シリーズ作とはいっても、第二弾は一作目とは切り離された作品になっていました。今回の舞台は兵庫県の淡路島。監督は、前作の塩屋監督から、「月とキャベツ」の篠原哲雄監督にバトンタッチされています。

萩上監督の「かもめ食堂」とかもそうですが、食をテーマにした映画というのは結構万人向けの鉄板作品だなーと思います。この「種まく旅人」シリーズは食とはいいつつも、もっと原料に近い農産物であったり、海産物であったりするんですが、それでもそれらが映画館のスクリーンに現れると美味しそうと思ったりするし、畑を行き交うトラクターや、海苔の養殖場を進む漁船を見ても、やっぱり自然はいいなーと素直に思います。この辺りは、後援している農林水産省の思うつぼにハマってしまうところかもしれません(笑。そういったことを加味しなくても、淡路島が玉ねぎが名産(公開初日鑑賞で、お土産付)ということも初めて知ったし、海と山が共存し、本作で描かれる”かいぼり”という伝統作業が、互いの実りを補完する共同作業になっているというのも知識として知るのは面白いです。劇映画という要素だけではなく、こうした昔からの伝統であるとか、その地域で生きてきたことの業みたいなものを知れるというのは、ドキュメンタリー的な側面もあり、映画として深みを増している部分だと思います。

しかし、肝心の劇映画としては工夫が少ないというか、すごくシンプルにお話がまとめられています。映画の中心として兄弟の対立があっても、最後の最後には分かりあえることは既定路線だし、頭でっかちでしかなかった中央官僚が、実際に地域の人に触れ合うことで変わっていくことも予定調和。何事もブレルことなく進んでいくので、ドラマとしては比較的単調かと思います。だからこそ、前作の大宮金次郎のような突出した面白いキャラクターが欲しかったのですが、そういった変化球が投げれるような人物が、本作には残念ながらいなかったかな。。しいていうなら、日本神話にあるような海彦と山彦の物語のようなところとお話的にオーバーラップするような、突拍子のない演出でも欲しかったところ。お話的には文句をつけるようなところもないのですが、全て美味しそうな農産物と海産物の情景に助けられているような作品のように感じてしまいました。

次回レビュー予定は、「ミッション:インポッシブル ローグ・ネーション」です。

8月 18

彼は秘密の女ともだち

「彼は秘密の女ともだち」を観ました。

評価:★★★★

愛しているともとれるくらいの幼馴染の友だちが死に、彼女の夫と彼女の死を慰め合う主婦クレール。彼女の前に現れたのは、その夫が女になった姿だった。。。「まぼろし」のフランソワ・オゾンの2014年製作作品が日本でも公開となりました。性を超越するオゾン監督の力量が本作でも如何せん発揮されているし、ある意味、エポックメイキング的な作品になったのかもと思わせる節を至る所に感じることができます。主演は「間奏曲はパリで」でも美貌を垣間見せ、本作でもその力量を発揮しているアナイス・ドゥムースティエ。女ともだちになってしまう夫を演じるのは、「真夜中のピアニスト」のロマン・デュリスです。

普段の生活の中でも、見えない境界線というものが至るところにあると思います。どこかお店に行けば、お客と店員という線があるし、仕事の中でも部署や上司部下の中に線があり、家庭生活でも夫、妻、親戚、近所などなど、それぞれの役割によって、その世界があり、その世界の間には見えない境界線が引かれているのです。よく思うのは、多分愛というのは、その線を尊重しながらも、時々はその線を飛び越えて、相手の懐に飛び込むということ。人は、それぞれの世界の中を大事にしているし、だれにも犯されたくないと思っているんだけど、同時に、その世界の中に誰かを引き込みたい、一緒に夢を見たいと思うのも事実。単純に男と女の愛情というだけではなく、人と人との交わりの中で普遍的な愛というのは、境界線を尊重しつつ、その線をも超えるような関係の中で構築されていくものなのかなーと漠然と思います。

オゾン監督の凄いのは、各作品の中でそうした境界線を感じない、フラットな人間関係を描いていること。男女差なんて超えるのは当たり前。ときには生死の境(「まぼろし」、「ぼくを葬る」)や、犯罪の境(「クリミナル・ラヴァ―ズ」、「焼け石に水」)、妄想と現実との境(「危険なプロット」)をも超えていく。その意味で、本作は愛するローラの死に対して、絶望する二人(クレールと、夫ダヴィット)がどのようにローラの死を乗り越えていくか(線を越えていくか)という普遍的な愛の物語を描いているのです。その中で、ダヴィットは女友だち・ヴァルジニアに変身を遂げることで、ローラを身近に感じようとする。ゲイだとか、トランスジェンダーだとかは関係なく、そこには一人の人間が当たり前のように死に向かい合う姿がある。最初は変に思うクレールも、自然とヴァルジニアに想いを寄せるようになるのです。

異様な世界感を、あくまで普通の物語として描いていくオゾンの姿勢は真っ当そのもの。逆に、世間が”変!?”と思う姿を滑稽なコメディ要素として、物語の中に織り込んでしまうのです。「まぼろし」のような大胆な設定美はないものの、ますますオゾン作品が好きになってしまう小気味いい小品だと思います。

次回レビュー予定は、「種まく旅人 くにうみの郷」です。

8月 17

チャッピー

「チャッピー」を観ました。

評価:★★★★★

「第9地区」、「エリジウム」のニール・ブロムカイプ監督が描く近未来ロボット映画。昨今何かと人工知能やロボット開発に注目が集まっていますが、本作の舞台は2016年(なんと来年)。ブロムカイプ監督お馴染みの南アフリカで、人型のロボットが警察用・軍事用として活躍している社会(んー、設定が何かに似ているけど、、)。人間たちをサポートするように登場してきたロボットたちだが、密かに人工知能搭載型のロボットも研究されていた。開発者のディオンがひょんなことから、壊れかけた廃棄用ロボットにその人工知能を埋め込む。最初は、子どものような動作を示していたロボット”チャッピー”は、次第に様々なことを学習し始めていくのだった。。

今の研究レベルというのは進んでいて、人工知能の研究に関しても、脳のほとんどの部位の活動というのが機械的なモデルに置き換えることが可能になっています。しかし、大脳皮質、小脳、海馬など、脳の各部位での動作は分かってきていても、それらを統合させて、何かしら知的な処理が行われるにはあと少し時間がかかる(といっても、十年くらいといわれていますが)のが現状。その間にコンピュータ自体も劇的に進化していて、従来型の知識蓄積型の人工知能(脳を模倣するタイプより、一世代前の形ですが)では、私たちの身近なところで生活を支えるようになってきています。この映画の設定が2016年と銘打たれているのは夢物語ではなく、ほんの少し先には必ず起きるような現実が描かれているといってもいいのです。

映画自体は、考える頭脳を手に入れたロボット”チャッピー”が、何の運命か、ギャングに囚われの身となり、その中で経験する様々な事柄から進化していく様が描かれます。人工知能というのは知識を得るまではシンプルな動きをすることが分かりますが、それが人の幼児期のような幼い動作をするとは必ずしも思わないので、本作のチャッピーの初期段階の描かれ方というのは、少し見方が偏っているかなとも思います。幼児のように振る舞うというよりは、最初はでくの棒みたいな形で、徐々に覚えながら、学習をしていくというところが技術屋目線からは本質かと思います。でも、こうした幼児のようなロボットが、身に降りかかる怖さを覚えながら、徐々に自律的に動いていく様は逆に怖い。本当に人工知能ロボットが、感情の赴くままに行動していくなれの果てというのは、「ターミネーター」に描かれるような終末感しかないように思えてきます。

この作品のすごいところは、単にロボットの暴走というところに留まらず、こうした感情というものの暴走や、ラストでの驚きの設定など、私たちの肉体と自我という哲学的なところまで突っ走っていくことです。最初は怖い怖いというばかりで、ちょっとウザいチャッピーですが、彼の学びは、本当に人を凌駕するところまで到達してしまう。そして文字通り、機械を操作する側であるはずの人間さえも、彼らの世界に取り込まれてしまう。こうして生きる私たち、人というのは、この世界ではどういう存在であり続けるのだろうという、凄いパンクSFの極みみたいなところまで魅せられてしまうのです。今までのブロムカイプ作品同様の色になってしまうのはいささか残念なところではありますが、本作は「第9地区」以上に突っ走っていく傑作だと思います。

次回レビュー予定は、「彼は秘密の女ともだち」です。

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